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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
 念の為に一人掛けの椅子に座る。

 前の座席の背凭れに、微妙に体が隠れる。

 僅かに開けた窓からは、風すら入って来ない。

 最早、限界。

 暑さで思考も鈍るくらい、ブラウスの中から額にまで汗が滲んでいる。

 シュルッと胸元のリボンを外すだけでも、解放感からか涼しさを覚える。

 座席から脚が食み出るくらいに開けば、スカートの中の熱気が逃げていく。

 雷まで鳴り出し、バスの屋根に打ち当たる雨音も大きくなってきた。

 それ以外の音はしなくなった車内。

 チラチラと運転手の様子を窺いながら、ブラウスのボタンを外していく。

「…ふぅ…」

 胸元から二、三個外しただけで、外気に触れた事で思わず声が洩れた。

 チラッと視線を下げれば、やっぱり谷間に汗がシットリと浮かんでいた。

 堪らずバッグからハンドタオルを取り出す。

 運転手を気にしながら、谷間に浮かんだ汗を拭う。

 それだけでも、少し爽快感が戻ってきた。


…てか……
この雨……いつ帰れんだろ……


 何やら無線で話す運転手の声を聞きながら、胸元をそのままに腕時計を見ると、六時をとうに過ぎていた。

 雨の勢いは衰える様子さえなかった。
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