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狂人、淫獣を作る
第2章 捕獲

(2)

    ※  ※  ※

 「ど、ど、どうしてだ!? どうして警察に言ったんだ!!」
 放課後のひと気のない校舎の端にある二階の廊下で、野田は涙も鼻水も垂れ流しながら、リナの両肩を強くつかんで揺すりながら言った。
 「せ……先生、痛いっ……ですっ……」
 その時、廊下の向こうからスーツ姿の二人の男たちが野田の名を呼びながら走ってきた。
 「里奈……里奈……どうして……!!」
 野田は必死の形相で慌てながら目の前の窓を開け、一瞬ためらった後に二階から地上へと飛び降りた。
 不安と恐怖が過ぎ去ったリナは、スーツの男の一人に抱えられた感触を感じながら意識が遠のいていくのがわかった――。

    ※  ※  ※

 後藤は寒そうに半纏の前合わせを引っ張りながら、背筋を若干丸めてトイレから戻ってきた。
 「後藤氏、追加の熱燗はすぐに持ってきてくれるそうですよ」
 「そいつはありがたい」源の言葉に、後藤はそう答えて元の場所にあぐらをかいた。「どこまで話したんだったかな?」
 「友人が警察に捕まったところまででしたね」
 「それが捕まってないんだよ」
 「……ほう?」
 「警察が友人を捕まえに行った、ということは俺も聞いた。そしてすんでの所で逃走したということもオマケで聞いた……何を悪あがきしてるんだ、とは思ったがね。一瞬、あいつがリナに復讐でもしに行ったかとも考えたが、警察もバカじゃない、逃走している間はしっかりリナのそばでガードしていたらしい。どうせ逃れられん、友人も自業自得なんだから、俺は一旦この話を忘れることにした。多少尋問を受けたがね……俺は何もしてないし、幸い倶楽部の存在も明るみに出ることもなかった。リナが親に相談したのも彼女自身が自分一人で考えて、自分一人の意思で決めた行動だったし、校長の計らいでリナの話は学校内に一切広がることもなかった」
 そこに、旅館の仲居が新しい熱燗を持ってやってきた。
 源は後藤の猪口に熱燗を注いでやると、後藤はくいっと一回で飲み干した。源はもう一度注いでやった。
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