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勤労少女
第1章
「ええ!? 今日は二万もないの!? 役に立たないわねぇ」
座卓を挟んで母と向かいあわせに座っている詩緒莉はうつむいていた。今日は一人しか客がつかなかったのだ。
「詩緒莉、あんたホントやる気あるの?」
「……ごめんなさい」
「いいわ。さっさと晩御飯作って」
詩緒莉はゆっくり立ち上がった。
「あ、詩緒莉。明日ほら、あそこの人……そうそう、市役所の人が来るからさ、生活保護のアレとかで。もしあんたの方が先に学校から帰ってきた時にね、お母さん布団で寝込んでても本当に具合悪いわけじゃないからね。芝居芝居」
詩緒莉は小さくうなずくと、作り置きしている惣菜を冷蔵庫から出した。
詩緒莉は、布団に潜り込みうつ伏せになりながら、目の前のバラバラのミサンガを見つめていた。
幼さをまだ残すその目から、突然ぼろぼろと涙がこぼれてきた。
涙は、とめどなくあふれ続けた。
詩緒莉は枕に顔をうずめて、声を殺して、ずっとずっと泣き続けた。
<終>