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ジャスミンの芳香~悦楽エステ令嬢~
第5章 SUMIKA
しばらくシャワーも使う気にならず
狭い施術台で 抱き合っていた。

行為が済んでも
まだ俺の胸中に 期待感が渦巻いていた。


今でも
スミカの事は、ほとんど知らない。

エステの仕事のスケジュールと
電話番号くらいしか知らない。

このエステサロンの事を聞いたとき
資金の援助をもちかけた。
だが、頑(かたく)なに拒まれた。

スミカは俺の手を一切借りず
自立して いま活躍している。

その所為か
俺は尚更、スミカに夢中になっていた。


「……ここで寝ちゃいます?」

スミカが顔をあげ、声をかけてきた。

「君の仕事場で、そんな失礼な事できないよ」

そう答えると、スミカは悪戯っぽく笑った。


たぶんちかいうちに
プロポーズするだろう。

まだこの娘の家族構成も知らない。
過去の経歴も、何一つ定かではない。

……スミカが『嘘』だと言ったのは
俺が知っているスミカの なにかが
虚飾なのだと言いたいのかもしれない。

例えば
短大生の頃 
風俗エステで 新人だったこと
俺に会った時、マッサージは覚えたてだったこと

そのいずれか、或いは
その全てが 嘘なのかもしれない。

俺の想像の範疇を超えた生活を
送っていたのかもしれない。


……それでも構わない。

彼女のプロフィールに、嘘があってもいい。

初めて出会った頃のイメージ・印象

それすらも、もはや過去のことだ。


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