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ジャスミンの芳香~悦楽エステ令嬢~
第1章 透明(クリア)な疑惑
昔は、マンションの1階部分に商業店舗が入る
いわゆる”テナント物件”は、質が劣るとされていた。

純然たる居住専用の物件が良いとされた。

最近は、どうだろうか?

このマンションも1階部分は、スーパーだ。
さらに隣は商業棟で、空中通路で繋がっている。

カフェバー・ドラッグストア・インポート家具の専門店……
商業棟は平日でも夕方から夜にかけて、賑わう。

商業棟の4階までは店舗、その上は立体駐車場だ。
5階、6階までは車も、多い。

7階は屋上。
そこまで登って駐車する利用者は、さすがに少ない。


俺は屋上で一服している。
地味な国産車のシートに、座っている。

夕陽は落ち、夜闇が迫っている。
居住区の高層部が、屋上に影を落としてくる。

……最上階の部屋も、億には届かないだろう。
この辺は地価も安い。大したマンションじゃない。

俺の全身を、倦怠感が押し包んでいる。
ぼんやり時間をつぶして、待っていた。

車のミラー。リアビューに女がうつる。

まばらに駐車した車の間を、歩いてくる。
他に人影は無い。

ヒールが高い。女の歩く姿形は
腰を中心に、規則的に振り子を描く。

最近また流行っている、ボディコンシャス。
ミニの裾。膝上25cmくらいだろうか。

女は、俺の車番を知っているはずだ。
迷いが無い。まっすぐ歩み寄ってくる。

大きめのスポーツバッグ。
そのデザインも、奇妙なほど服と、似合っている。

全身が、バイオレットの薄闇に溶け込むようだ。
透明感のある、統一感。

女は薄茶の髪。ショートボブだ。
清楚に切り揃えた前髪が、揺れている。

ハーフっぽい、涼やかな顔立ち。
ファッション雑誌のモデルのような顔が、のぞきこんでくる。

「あの、こちらでよろしいです?」

合成音めいた、声。
そのお上品な物言いに、違和感を覚える。

* * *
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