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ジャスミンの芳香~悦楽エステ令嬢~
第1章 透明(クリア)な疑惑
女を助手席に乗せ、エンジンをかける。
7階建ての商業棟の外周沿いに、下りていく。

「お会いするのは初めてですね。
改めてはじめましてです。スミカと申します」

明朗な抑揚で自己紹介してくる。
スラスラと話す。機械のようだ。

運転しながら、助手席のスミカの顔を覗う。
車路を四角く照らすライトが、支柱をよぎって明滅する。

無機質なグリーンの光が
女の美貌を滑らかに、フラッシュさせている。

ルックスは、俺ごのみだ。
ネットの写真で指名したから、当然だ。

20歳そこそこの、咲き零れるような笑顔。
プロフでは短大生だった。

今、実際会ってみると、印象が違う。
クリアガラスで覆われているような、違和感。


マンションのある街区から、郊外へ。
街灯はみるみるまばらになる。

車外は早くも夜闇に包まれていく。
シティホテルの外装が、すぐ見えてくる。

夜の灯り、淫らなアップライト。

「ここでいいね」
「はい」

俺が念を押すと、即答する。
スミカの横顔には、惑いも恥じらいもない。

チェックインを済ませると、スミカは率先してEVを呼ぶ。
一切、無駄口が無い。

上階の部屋に着き、室内で取引を済ます。
俺が脱ぎ、シャワーを使い始めるまで
ただテキパキと誘導し、手際よく支度をする。

独りで、熱いシャワーを浴びながら
俺はなんとなく、後悔しはじめた。

……味気ない。
期待していた流れと、違う。

スミカのルックスは、たしかに整っている。
立ち居振る舞いには、可憐さがある。魅力的ではある。

だが、情感がない。まるで無い。
彼女を選んだのは失敗だったかもしれない……

シャワーを済ませて出ると
バスタオルを持ったスミカが待ち構えている。

「体をお拭きしますね」

早速拭きはじめる。
その動作は、相変わらず一切無駄がない。

ただ、彼女はスーツを脱いでいた。
水着姿になっていた。

視界に生々しいふくらみがとび込む。
プロフィールでは、バストはEカップだと思った。
だがその瑞々しいボリュームは、更にふた回りはありそうだ。

その突端に、面積の狭い布切れが貼りついている。
鮮やかな光沢のある、薄い生地。
サイドは紐だけだった。

一瞬、俺の中から違和感がかき消えた。
無味乾燥なシチュエーションの中で
スミカの豊乳は、生の質感を誇っていた。

* * *
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