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ジャスミンの芳香~悦楽エステ令嬢~
第1章 透明(クリア)な疑惑
ジャスミンの香りが部屋を包みだす。
ひと通りオイルを塗ったあと、上半身からほぐされる。

女の繊細な手指が、じっくり圧を掛けてくる。
必要、かつ充分な力。
マッサージの加減は、文句のつけようがない。

「痛かったら教えてくださいね
 コントロールしますよ」

スミカの美声。
うつ伏せの俺の耳に、クリアに浸透してくる。
空港のロビーで、外国語のアナウンスを聞いているようだ。

……ここはシティホテルの一室。
地方都市、それも外れのほうだ。
安モーテルと言ったほうが正しいかもしれない。

なんとなく、スミカの様子を覗う。
俺は枕に預けた顔を横様にして、半眼にしている。

……若いし、礼儀正しい。
美形だし、涼やかな目元は俺の好みだ。
仕事の手際は良い。マッサージも優秀だ。

しかもさっき見せ付けられた、ビキニ姿。
強烈だった。いいカラダをしている……

諸々の条件が整い過ぎている所為なのか
ただひとつの不満が、あまりにも気になる。

スミカは、まるで造り物だ。情感が無い。
親しみやすさが、まったく無い。


両腕へのマッサージに続き、背中に手圧が及ぶ。
背筋の中央部をほぐされると

「おお……」

思わずうっとりと声が出た。

効く。

仕事がら、目と、背中に、疲れが溜まりやすい。
特に背中は最近の連勤で、がちがちに凝り固まっていた。

「背中がいい、すごく効くよ
……目と背中が、俺の弱点なんだ」

「はい」

スミカは背中への施術を本格的にしてくれた。

肩甲骨に沿った面積の広い部分を大きくほぐしてくる。
力強いタッチが、効く。
それが済むと、頚椎から腰骨の辺りまで細やかに指圧する。
一遍にリズムが変わる。
小鳥のクチバシがくわえてくるような、軽快なローリング。

再度、頚部から僧帽筋へ、脊椎に沿って腰部へと
丁寧にほぐされる。

「おおっ……!たまらない……
血流が音をたてて、蘇っていくようだ……」

俺は感嘆し、その感触をありのままスミカに語っていた。

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