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ジャスミンの芳香~悦楽エステ令嬢~
第4章 白い香り
可愛い女だからといって、風俗で簡単に通用するわけではない。
やや大袈裟になるが、『心技体』がそろっている売れっ子には
なかなかお目にかかれない。

スミカは『技』の方面で並外れた素質がある。
抜きテクだって慣れれば伸びるだろう。

『体』も、素晴しかった……

『心』は、どうだろうか?
俺の印象ではまるでダメな気がする。
だが、そこがいい。

「普通のエステサロンでも通用すると思うよ」

何となくそう言った。
他意は、無いつもりだった。

だが後で思えば、俺の本音が混じっていたかもしれない。
独占欲のようなものが、働いたかもしれない。

『風俗やめれば?』
本当は、そう言いたかったのかもしれない。

「通用しますか……」

スミカはそう呟いていた。
つまらなそうな口ぶりだ。


別れ際。
スミカは黙って車を出て行った。

俺の首筋へ、かすめ盗るようにキスをしていった。
走り去っていった。

俺は車内で、しばし余韻に浸っていた。
ジャスミンの残り香が、香っている。

風俗エステを使うのは
身体の疲れが溜まった時だけだ。
しばらく機会はないだろう。

だが、スミカに逢いたくなるかもしれない。
この、ジャスミンの香り……
今度何処かで嗅いだら、その時は
我慢できないかもしれない……

ふと助手席のシートを見ると
小さな落し物があった。

……落し物と呼ぶには
少々露骨かもしれない。

スミカの名刺だった。


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