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徒然なる日々
第1章 はじまり
「ありがとう♪」


父に笑顔を見せた後、やっぱり簡単ね、と知美は心の中でほくそ笑んだ。


表向きは素直で明るい知美だが、本当は計算高くしたたかな娘だった。


『どうすれば親に愛されるか』14歳の知美はよく分かっていた。


父とは音楽の話題を頻繁にする会話、吹奏楽で知り得た楽器の知識やクラシック音楽、話題には事欠かない。


母には、家事の手伝いをして、一緒に過ごす時間を多くするだけ。10代の難しい年頃であるはずの娘から積極的に関わってくれる、それだけで母は“良き母”という世間の賞賛を得た優越感に浸ることが出来たのだった。


知美の計算は的確で、父には『音楽を愛する可愛い娘』、母には『明るく穏やかで一緒にいると幸せな気持ちになる娘』と思われている。


ただ、香と七菜には知美の本当の顔が分かっていたらしい。

幼い頃の姉妹間の喧嘩は、何故かいつも香と七菜vs知美になっていたのだ。

そして、泣いた知美が母や父に助けを求め、味方にして、喧嘩を仲裁してもらう。


香と七菜は年齢が6歳離れているが、18歳と12歳になった今でも、よく香の部屋に集まり、一緒に時間を過ごしているようだ。


知美は特に気にもせず、家にいる間は父や母と過ごした。



後に、香と七菜との関係が知美の人生に大きな影響を与える事になるとは、今の知美には知る由もなかった。
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