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後宮艶夜*スキャンダル~鳥籠の姫君は月夜に啼く~
第10章 後宮艶夜*スキャンダル  深き眠りの底で~浄心院での日々~
 ところで、浄心院には紫蘭と同じように自ら望んで浄心院入りした女がもう一人いた。先々代文治帝の皇后胡氏である。つまり光徳帝には祖母に当たる女性であり、郁皇后には嫁に当たる人だ。確かそろそろ六十歳になるはずである。
 この胡皇后は随分と風変わりな女性であるという評判だった。郁皇后もその孫の武徳帝の皇后(紫蘭を嫌った光徳帝の母)も操国では名の知れた貴族の娘にも拘わらず、この胡皇后だけは何と宮女出身である。父親の身分も宮殿の雑役夫という下級官吏ですらない。
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