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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第17章
「用意……、アクションっ!」
四方からのライトで煌々と照らされる中、目の前のカメラにすっと腕を伸ばしたヴィヴィ。
「日本国際航空はこの春、ヨーロッパ路線を拡大します!」
送風機の風に舞い上がるのは、撫子色の桜の花弁。
未だ慣れぬ撮影にも臆する事無く、うっとりと微笑めば。
「カット――っ! おっけー……、うん、おつまるですっ」
映像を確認した監督の声に、静まり返っていたスタジオが一瞬で元の賑やかな状態に戻る。
緩く巻かれた金の髪や白い衣装に纏わり着いた花弁をADが取り除いてくれる間、ヴィヴィは撮り立てほやほやのCM映像を覗き込む。
春の始まりに相応しい桜の花びら達がヴィヴィの周りを取り囲み、巻き上げ、そして新たな世界へ旅立たせる――。
そんなテスト動画を確認したヴィヴィは、ほうっとため息を零した。
「すごく綺麗ですね」
「CGで花弁を足すから、もっと幻想的になると思うよ」
助監督の言葉に「楽しみです」と返していると、傍で見ていたクリスが頭のてっぺんにも桜を見つけて取ってくれた。
「クリス君とヴィヴィちゃんのラッピング機、早くも予約殺到だって」
「光栄です……」とクリス。
「私もラッピング機に乗って、ヨーロッパー行きたい~~♡」とヴィヴィ。
「いやいや。いつも英国に帰るとき、乗るだろうが」と牧野マネージャー。
「ちがうの~~、それはただの移動手段。そうじゃなくて、旅行に行きたいの! バカンス――っ」
先シーズン終えたばかり&スポンサーのCM撮りで、まだオフに入れないヴィヴィは、若干変なテンションで両拳を握りしめた。
「はいはい、じゃあ次のシーンに合わせてメイク変えるわね。も~~、ヴィヴィちゃんったら信じられないほど肌きめ細かいわ~~」
強制連行されてきたヴィヴィを、メイク室の鏡越しにスタイリストが覗き込み、羨ましそうな視線を向けてくる。
「……? そうですか?」
自分で頬に触れてみても、いつも通りとしか感じない。
「そうよお~~。弾力も10代みたい! ぷりんぷりんっじゃない!」
お姉言葉で羨ましがってくれる男性スタイリストに「さすがに10代は言い過ぎだ」とお世辞を見抜いたヴィヴィは、ケープを掛けられた肩を竦めた。