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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第17章
「……はぁ……。若いって、いいよなぁ……」
老いは手の甲からやって来るんだったかな? と、無意識に両掌をさするヴィヴィの零した言葉に、
「きぃ~~っ!? ヴィヴィちゃん、まさか、ボクにケンカ売ってるの!?」
髪を弄っていたスタイリストからの行き成りの突っ込みに、思考が口からダダ漏れだったと今更気づいたヴィヴィは「そ、そうじゃないんですっ!」と真剣に言い訳を重ねたのだった。
国別対抗戦を終えてからの四日間、スポンサー訪問やCM撮りに奔走していた双子。
かねてから熱望していた短いオフをようやくゲットしたヴィヴィは、
4月11日(金)からの五泊六日間――成田発の直行便で約五時間のフライトを経て、ミクロネシア諸島のひとつ、パラオ共和国に降り立った。
「凄い! なんか空の色からして違う気がするっ」
入国審査を終え空港を出たヴィヴィは、両腕をグーンと伸ばし全身で南国の空気を味わう、が。
「暑い……」
その後ろから二人分のスーツケースを引いて来た兄は、そんな分かり切っている事を零した。
離れた距離で向かい合った二人の傍を、空港ビルから吐き出された世界各国のダイバー達が通り過ぎていく。
「そりゃあ熱帯雨林気候だもん。東京との温度差は15℃くらいかな~~?」
ようやく妹の隣に立ち止った兄は、胸ポケットに入れていたサングラスを取り出し掛け、頭一個分下にある金のそれを見下ろした。
「さて、と……、ホテルのハイヤーはどこだろう?」
「う~~ん、と……、あ、あった!」
Palau Pacific Resortのフリップを掲げるドライバーに気付いた妹は、兄の両腕にぶら下がる様にしがみ付くと、ロータリーに停車しているハイヤーに引っ張っていこうとするが。
「いや……、ちょっと、待って! スーツケース!」
「もうっ お兄ちゃんったら、早く――っ!!」
南国の日差しに輝く白い歯を零しながら先に駈け出したヴィヴィを、何故か二人分のスーツケースをまた転がす羽目になった兄――匠海は「しょうがないな。転ぶなよ~~」と苦笑しながら追った。