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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第17章                         

「え……ウソ……。まさか、する、の?」

兄のまさかの悪戯に妹は目を白黒させる。

まだ、こんなに明るいのに。

目の前には遮るものが何一つない、広大な太平洋が広がっているのに。

しかも、こんなに素敵なリゾートに来たのに――!

「そんなの、するに決まってる」

「……っ せっかく塗ったのにぃ~~っ」

恨めしそうにうつ伏せから睨む妹を、笑みを深くした兄は有無を言わせぬ声音で丸め込んだ。

「何度でも塗り直してやるから、心配するな」

「でもぉ……。プライベートビーチも行きたいしぃ」

「うん」

「カヤックも……、あ! パドルサーフィンも出来るって!」

「うん」

「テニスもしてみたいし~~、フィッシュ・ポンドも覗きたいし~~」

「うん」

セックスなら夜に出来るから、日が暮れる前に遊びつくしたいヴィヴィの提案にも、匠海は笑顔で頷いて流すだけ。

(……えぇ……。もしかして、ずっとえっちして過ごすつもりじゃない、よ、ねえ……?」

皮膚の薄い額をうっすら寄せた妹に、その胸の内を簡単に読み取った兄が破顔する。

「だから、五泊もするんだから、ヴィヴィがやりたい事、全部一緒にやろうな?」

「……――っ う、うん」

痛い程の日差しを背負った匠海に、サマーベッドに伏せた胸がとくりと疼く。

(そ……、そっか。私、五泊六日もお兄ちゃん、独り占めしちゃうんだ……)

「ってことで、今はセックスな」

「……っ はいぃ~~っ!?」

「だから「明日で世界が終るかもしれない」から、今やりたいことをやらないとな。俺は活きが良くて旨そうなヴィクトリアを、今すぐ食べたい」

そう言って細い躰をひょいと横抱きした男は室内に入り天蓋付きベッドに下ろすと、まさに「まな板の上の鯉」よろしく美味しく頂いたのだった。



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