この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章
「……お嬢様……」
きしり。
小さな軋みを上げながら、高いベッドから脚を降ろしたリーヴは、
腰が抜けた状態の情けない主の元へと、少し乱れてしまったブルネット(栗毛)を撫でつけながら、歩を進めてくるが。
「ゃ……っ よ、寄らないで……っ」
ヴィヴィのその懇願は、当然のものだった。
「……お帰りは明後日――と、お聞きしておりましたが……?」
まるで主を責める口調の執事に、ヴィヴィは瞳を眇めて長身のその男を見上げる。
「失礼致します」
「……え……? ちょっ!? や、やだ……っ!!」
断りの言葉と共に主に腕を伸ばしたリーヴは、いとも簡単にその身体を持ち上げ、
そしてあろうことか、下着の散らばったベッドの上へと恭しく降ろした。
「な……っ しょ、正気なの……っ!? こ、こんな事して……」
主の不在時に、その下着で自慰に耽る――。
物心付いた頃から自分が接してきた執事達は、間違ってもそんな事をする人間はいなかったのに。
「……私の過ちを、許して頂けますか?」
ベッドの上にへたり込んでいるヴィヴィに、リーヴは確認してくるが。
「………………」
寝台の脇に立つ執事の視線から、ヴィヴィは顔を背けた。
リーヴを許す……?
そんな事は、絶対に無理だ。
対 友人・知人であれば、許すかもしれないが、
リーヴは “執事” だ。
主と執事。
そこには奉仕と対価という雇用と利害関係が存在し、成り立っている主従関係。
私室というプライベート空間に立入る事を許し、
洗濯や掃除を任せ、自分の口に入れる食事を頼み、
ましてや財産の管理まで任せている。
そんな事を “信用の置けぬ相手” に任せられる筈が無いではないか。
「どうやら許しを頂くのは、無理のようですね……」
「悪いけれど……」
「では、私はそう早くない内にクビになる。そうして、二度とお嬢様の傍へと、寄る事が出来なくなります」
「……え……?」
リーヴの意味不明の言葉に、ヴィヴィは背けていた顔を、恐るおそる彼へと戻す。
醜態を見られたとはいえ、執事然としたリーヴは、
主のベッドの傍、美しい立ち姿で佇んでいて。