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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第18章

五泊六日のヴァケーションから帰国し、その三日後から大阪でSTARS ON ICEに出演し。

東京に戻ればオリンピックセンターでの検診、残っていたCM撮影や雑誌インタビュー、と旅の思い出にゆっくり浸る暇もないほど、ヴィヴィは日々に忙殺されていた。

日本での滞在も残り四日となった――4月24日(木)

古巣である松濤のリンクから篠宮邸に戻ったヴィヴィは、ゆっくりと朝湯に浸かり疲労を脱ぎ去り。

濡れた髪をタオルドライしながらリビングに行けば、滞在時の執事・五十嵐が気を利かせ準備しておいてくれたライム入りのグラスに目を留め、ミネラルウォーターを注ぐ。

ガス入りのそれが奏でる爽やかな破裂音に口元を緩めたヴィヴィが、よく冷やされたグラスを手に取った、その時。

コンコンと響いたノックの音は、三人兄妹の部屋を繋ぐ扉からだった。

ついと時計に瞳を滑らせれば、マントルピース上のそれは九時過ぎを示しており「まだ出社しないのかな?」と軽く首を傾げつつ、声を掛ける。

「な~~に~~?」

家族という気の置けない間だから許されるそのダルダルな返事に、当然相手は気安く立ち入ってくると思ったのに。

(ん? 両手が荷物で塞がってる?)

一向に開けられる気配のない扉に、白いルームシューズを纏った脚が向かう。

すたすたと歩を進ませ、躊躇する事無く自ら開いた、長兄と末妹の私空間を繋ぐ扉。

そこに直立不動で居住まいを正している人物を目の当たりにしたヴィヴィは、軽く瞳を見開いたが、それでも手にしていたグラスを落とす程の驚きは見せなかった。

常と変らず優雅さと気品に満ちた笑みを湛える相手に、見張っていた瞳はすぐに収まり。

やがて意を決した双眸で、匠海の部屋に佇むその人と対峙する。

家族や屋敷の人間以外で、兄のプライベートに立ち入ることを許されている、その人。

「………………」

(そろそろ来る頃だと思っていたわ、お義姉さん――)

自分よりも背の高い義理の姉――瞳子は微かに首を傾げ、無言で見上げてくる義妹に柔らかな声で許しを乞うた。

「こんにちは、ヴィヴィちゃん。少しお邪魔してもいいかしら?」

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