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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章
見目麗しい二人を交互に見ながら何故かのけ反る宮田に、ヴィヴィはあっけらかんと断りを入れた。
「あ、別に、結婚とかは “全く” 考えてないですから」
「ヴィーっ!!」
クリスの親友 かつ ヴィヴィの恋人――の筈が、あまりにも適当な扱いを受けて、男前も丸潰れである。
「でも、そうか。うん……じゃあ、やっぱりあの選曲で良かったな。ヴィヴィ、おめでとう」
一人で納得してしみじみ嬉しそうに頷いた宮田は、すっと右手を伸ばすと、向かいの席のヴィヴィに握手を求めてくる。
というのも、今シーズンのSPの選曲が、
「la vie en rose(薔薇色の人生)」
映画「麗しのサブリナ」より
だからであろう。
「あ……、ありがとうございま、す?」
そう礼を言って握手に応じたヴィヴィだったが、その胸の内は酷いものだった。
(てか、付き合ってるだけなんだけどな~~。まあいいか)
一応、宮田だけでも「おめでとう」と言ってくれて溜飲を下げたのか、着席し直したフィリップは、やおらヴィヴィに詰め寄る。
「じゃあ、ヴィヴィ。皆とのコンセンサスも取れたということで。今から自家用ジェットで東京ディズニーランドに行こう!」
「……はあ……?」
「恥じるな恥じるな。あれだろう? 日本女子は「初デートはTDLで♡」と夢見ているんだろう? ネットにはそう書いてあったから、俺のリサーチはバッチリだ、安心したまえ。いざ、その夢を今宵 現実のものに――!」
大げさな身振り手振りを交え、今からTDLに行く正当な理由を述べるフィリップに、皆の何とも言えない視線が集まる。
「……馬鹿なのネ、うん、分かってたけど、やっぱりそうなのネ」と、呆れ顔のダリル。
「……なんというか、勿体無い」と、宮田。
「残念な者同士で、意外とお似合いなんじゃない……?」と、クリス。
皆の正直な反応にウンウン頷いていたヴィヴィだったが、最後のクリスの一言だけは聞き逃せなかった。
「え? ちょっと待って。私も “残念な人” な訳!?」
物凄く不満そうなヴィヴィに、ダリルがとどめを指す。
「……自覚、無いのネ……」
その静かな突っ込みに、サーブをしながら静かに見守っていた朝比奈まで「ふっ」と吹き出してしまい。
「「朝比奈までもかっ!」」
思わず同時に喚いたヴィヴィとフィリップ。