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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章       

その週末――5月9日(土)10日(日)

双子はオックスフォードのホームリンクで、今シーズンのプログラムの振り付けを受けた。

毎回、選曲でゴタゴタするヴィヴィだが、今回は振付師・宮田の提案した曲に一発OKで、滞りなくSPの振り付けは終わった。

遠路はるばる飛んできてくれた恩師を労うため、双子と同居人が暮らす屋敷では、執事が腕によりをかけたディナーが供されていた。

天然木一枚板の大きなテーブルには、クリス、ダリル、宮田、ヴィヴィの順で腰かけていたが、その隣の席にぴったり寄り添うように坐する人物に、ヴィヴィ以外の皆が「はてな?」と首を傾げている。

「クリス! 聞いてくれたまえ! ついに、ついにっ 俺は――!」

皆の視線を受けて立ち上がったのはもちろん、フィリップ。

感極まった様子の男の隣、シャンパングラスを手にしていたヴィヴィは、ふと思い出して双子の兄を見やる。

「あ、そういえば、フィリップと付き合うことにしたんだったわ」

勝手知ったる我が家のように入り浸るフィリップだが、こうしたキチンとした会食の席にいる事はほぼ無かった。

それを今宵は許している理由を思い出したヴィヴィの説明に、クリスは食事を続けながら応える。

「ふうん……」

「ふうん、って。クリス! 俺の親友ならもっと喜んでくれよぉ!」

この二人の門出ならば諸手を挙げて喜ばれる、と思っていたらしいフィリップの悲しそうな突っ込みも介せず、兄は妹の空のグラスにシャンパンを注ぐ。

「ヴィヴィ……、ずいぶんと近くで、手を打ったんだね……?」と、クリス。

「あ、バレた?」と、ぺろっと舌を出すヴィヴィ。

「ヴィーっ!」

双子に良いように遊ばれている某国の皇太子を、今日初めて会った振付師・宮田はぽかんと見上げていた。

「やばい……。俺、歴史的瞬間に立ち会っちゃってる?」

南仏の公国を背負う超絶イケメン と フィギュアの世界女王 のカップル。

一時は日本でも二人の仲を騒がれていたが、今では「そんなこともあったね」と言われる過去の噂扱いである。

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