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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章
気付けば目の前にダリルがいて、跪いた彼は何故か悔しそうにヴィヴィを見下ろしていた。
「……本当に、いいのネ……?」
問われた事が分からず微かに首を傾げれば、同居人は太腿に置いた両拳をぐっと握り締めながら続ける。
「訴えなくて、いいのネ?」
「……うん。自業自得、だから」
大体の事はクリスから聞かされたのだろう。
元執事からの強姦未遂とは違い、明らかに「身から出たサビ」でしかない今回の暴行を、どうこうしようという気は無かった。
いつの間にか部屋から居なくなっていた兄達は、大丈夫だろうか。
結局、いつも尻拭いをさせてしまっている双子の兄。
中間子の彼ばかりつらい役回りを押し付けてしまい、長兄と末妹は本当に人間としてどうなのかと思う。
繊細な手付きで破れたシャツを脱がせてくれたダリルに礼を言い、手を借りて立ち上がったヴィヴィ。
何故か両腕が打ち身になったように痛んで。
クローゼットに歩み寄り鏡を覗き込めば、生白いそこには 指の圧迫痕がくっきりと付いていた。
ゆっくりと視線を外し、クローゼットの中からパーカーを選び頭から被っていると、ドタバタと慌ただしい足音が階下から聞こえてきた。
「……来たわネ」
「ん?」
「フィリップ……。さっき電話したのヨ」
「そう……」
一応 現彼氏なので、それも当然のことか。
高いところで纏めた筈の髪は、揉み合いになった後では、もはやぐちゃぐちゃで。
束ねていたゴムを外そうとしたヴィヴィの視界に、慌てた様子のフィリップが入った。
全速力で走って来たのだろうか。
はあはあと肩で息をする彼を見ていると、当事者である筈の自分だけが妙に冷静で、周りの方が大事にしている気がした。
「ヴィ――っ!!」
「うん……」
「どうした、その頭っ!?」
戸口に両腕を付き、目を真ん丸に見開いた王子の指摘に、ヴィヴィはきょとんとし。
そして、ダリルは げっそりと呟いたのだった。
「……まず、突っこむとこ、そこなのネ……」