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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第19章
何だかこめかみ辺りに痛みを覚え、そこを指で押すヴィヴィに対し、ベッドに横になったフィリップは肘枕をつきながら見上げてくる。
「え~~。じゃあ、ヴィーはどう思った?」
「ん? 私……? そうだなぁ……。「簡単なものだったんだな」と思った」
「簡単?」
「うん……。私「絶対にお兄ちゃん以外とは出来ない」と思っていたの」
「セックス?」
「うん……。でも、こんなに簡単に――ごめんなさい……っ」
あからさまに「兄以外と寝れるか試してみた」と言外ににおわせてしまったヴィヴィは、バツが悪そうに首をすくめる。
「いいよ、続けて――?」
「うん……。こだわっていたのは、思い込んでいたのは “自分の方” だったのかも……。だから、お兄ちゃんを余計に苦しめていたのかもしれない――」
昨日初めて明かされた、匠海が葛藤してきた “ヴィヴィへの執着” の一因。
「男は兄以外、永遠にいらない」と豪語し続けた妹に、相手の全てを欲しがった兄は「ならば――」と更に欲深になってしまっただろう。
起因を作ったのは自分だが、その後の醜聞は互いのせいで。
更に不倫に至っては匠海の方に責任の比重が高いと、心のどこかで思う自分がいたのは否定出来ない。
けれど、自分の思い込みや固執が、匠海を縛り付け狂わせて来たのだとしたら――
己の思考の海に溺れそうになったヴィヴィを強引に引き上げたのは、盛大に零された「はぁ~~~」という溜息だった。
ちらりと視線をそちらに向ければ、心底呆れ果てた様子のフィリップが見上げてくる。
「君は、本当っっっにクソ真面目で、融通が利かなくて、堅物なんだねえ~~!」
「~~~っ!?」
「いや、褒めてるんだよ?」
「……絶対褒めてないし」
語尾に苦笑が滲み出ている相手の言葉を、ヴィヴィが憮然と切り捨てる。
そんな可愛げの無い女の腕を掴み、男はベッドの中に引きずり込む。
「褒めているさ。情が深いのは君の美徳だ」
両肘を突いた囲いの中でそう真面目に語ったフィリップは、華奢な二の腕を丹念に舐め取る。
それはまるで両腕にくっきり残った圧迫痕を、癒し労わるような舌使いだった。