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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第20章
卒業試験までひと月を切っても、ヴィヴィの忙しさは変わらなかった。
7月頭に披露する、自身のエキシビションナンバーの振付。
7月半ばに披露する、双子プログラムの振付・特訓。
卒業試験を控えた学生以外が「死の8週間」に必死に取り組んでいるカレッジの中、
ヴィヴィも懸命にやるべき事を消化してきた。
そうして迎えた、6月10日(月)
オックスフォード大学 PPE(哲学、政治及び経済学部)3年生の卒業試験 初日。
ヴィヴィ達のような学部生の学位の評価は、
第1級(First Class)、第2級上(Upper Second class)、第2級下(Lower Second Class)、第3級(Third Class)、合格(Pass)の5種類。
3日間かけて行われる「卒業試験(Finals)」の成績で学位が決まる。
目指すのは、もちろん First Class だ。
2年もの間、フィギュアとの両立に悪戦苦闘しながら学んできた全てを、この3日間にぶつけてやる意気込みだ。
クリス、ダリル、そして朝比奈に見送られ、鼻息荒く1日目の試験に出かけて行ったヴィヴィだったが、
それも最終日の3日目にもなると、見るからにやつれていた。
(な、なんだろう……。たった3時間の試験なのに、終わった後に心身ともに消耗が激しすぎる……)
この2日間、試験から帰宅したヴィヴィは、うつろな表情で執事ににじり寄り、
「さ、さ、砂糖水を……」
とねだっていた。
脳みそをフル稼働しすぎて、エネルギー源となる糖が身体から枯渇していたのだ。
執事が用意したハーブティーにこれでもかと蜂蜜を投入してがぶ飲みしていたヴィヴィに、見守る朝比奈は気が気ではなかったと思う。