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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .

かいつまんで先日の様子を伝えれば、クリスは声だけでふっと笑う。

「フィリップらしすぎて、逆に清々しい……」

「ほんと。あんなにありのままの自分を好きでいられるなんて、そこだけは尊敬すらするわ」

ヴィヴィも困ったように肩を竦める。

というか、リンクイン寸前の緊張感漲る今、どうして自分達はフィリップのおバカ話なんかしているのだろうか?

互いに顔を見合わせた双子は軽く苦笑し合うと、意を決したように大きく頷き立ち上がったのだった。



日本時間――9月29日 朝の情報番組にて。

「こちらが昨日までフィランド・エスポーにて行われていました、フィンランディア杯のフィギュアスケート女子シングルの結果です」

アナウンサーの言葉を受け、モニターには次の順位が表示される。

1位 エリーナ・コスティリョワ(15) ロシア

2位 篠宮 ヴィクトリア(23)    日本

3位 ポリーナ・ブリホトナヤ(18)  ロシア

「鈴木さんは篠宮選手の この結果をどうご覧になりましたか?」

アナウンサーのふりに、元フィギュア選手の鈴森 明子が口を開く。

「当初の予定通り、四回転に挑戦できたことは素晴らしかったと思います。着氷で少し詰まってしまったのですが、そのあと冷静にリカバリをし、思い切って滑っていけたところが篠宮選手らしいスケートだったと思います」

モニター画面がジャンプの映像に切り替わる。

「これが、四回転フリップですね」とアナウンサー。

「回転は、練習の時を見ていると四回転まで回り切れていないシーンも見受けられるのですが。本番では片脚――右の軸にきちんと乗って降りているので、降りるイメージというのはだいぶ掴めているのかな、と」

「はい」

「練習の時はもう少し真ん中に軸があったので、右に軸が移せるというのは もうしっかりと形になっている証拠です」

更に映像が切り替わる。

「こちらはFSの2本目の三回転アクセルですね?」

「はい。踏切、回転数、高さ、幅、それぞれ完璧なジャンプでした。実は篠宮選手、三回転アクセルより四回転トウループの方が軸を作りやすい、締めやすいと言っていまして」

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