この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
2025年12月7日――グランプリ・ファイナル最終日。
中国・北京にて執り行われている大会は、日本のテレビ局と中継を結びながら報じられていた。
六本木のスタジオには、社会学者やアイドル、お笑い芸人に加え、プロフィギュアスケーターの村下佳菜子が集結していた。
来年2月の五輪を控え、この大会が最後の主要な国際大会であるため、世界各国で関心が集まり、ここ日本でも直前特番が組まれていた。
昨日に堂々の優勝を収めた双子の兄・クリスの話題で散々盛り上がった出演者達だったが、女子シングルの6分間練習が始まると、その妹・ヴィヴィの話題に切り替わる。
「今シーズンのFS使用曲『恋は魔術師』ですが。篠宮選手が敬愛するプロフィギュアスケーターの浅田真緒氏が、現役最後のシーズンに、SPとFS両方で使用した曲ですよね?」
メインMCのそのフリに、アナウンサーが答える。
「そうですね。スペインの作曲家であるファリャの代表曲で、バレエ音楽になります」
「真緒ちゃんのラストシーズンの曲か~~。てことは、それってやっぱり、ヴィヴィちゃんも……?」
お笑い第8世代の代表格として名高い芸人が、心配そうな表情を浮かべて呟けば、
「どうでしょうね? ここまで篠宮選手ご本人は “集大成” や “現役最後” というフレーズは使っておりませんので。今シーズンがラストシーズンになるかは、まだ分かりません。村下さん、本人から聞いたことはありますか?」
アナウンサーに尋ねられた村下は、にっこり笑いながら首を振る。
「いや~~、全く無いですね。たぶんヴィヴィは、今の目先の一大事――4回転に必死すぎて、それ以上の事まで構ってられないんだと思います 笑」
「私としてはいつまでもヴィクトリア選手を見続けていたいので、ぜひ来シーズンも現役で活躍してほしいです!」
自他共に認めるフィギュア・オタクの女子アイドルの言葉に、スタジオの皆もうんうんと頷いた。
「では、話を戻しまして。ここで今回使用されるバレエ音楽のストーリーをご紹介したいと思います」
そのアナウンサーの言葉と共に、映像がバレエの画に切り替わる。