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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
双子にとってのグランプリシリーズ第2戦――NHK杯。
11月21日~23日に札幌で行われたそれに、はるばる東京から駆け付けてくれた真行寺(兄妹改め)夫婦の応援の甲斐もあり、
自身初となるFSでの四回転トウループを成功させたヴィヴィは、安堵の表情で表彰台の二番目の場所にいた。
そのヴィヴィの後、照明の落とされた表彰式のリンクに入り、更に大きな歓声を浴びるのは、16歳のロシア選手――タイシア・コロビツィナだった。
三回転アクセルを決めノーミスで三位になった、米国のアリサ・リュウ。
三回転アクセルに加え四回転フリップと四回転トウループを決め二位になった、ヴィヴィ。
それぞれの選手と軽くハグし健闘を称え合ったタイシアは、成長前の華奢な身体に喜びを漲らせながら、表彰台の一番高い場所――今大会の覇者だけが昇る事が許されるそこへ ぴょんと飛び乗った。
四回転フリップに四回転サルコウ。
ジュニアの頃から高いGOEを叩き出す武器で今大会を危なげ無く戦い抜いた彼女に、ヴィヴィも大きな拍手を送る。
大会主催者や国際スケート連盟の重鎮達が、最後に礼を尽くして讃えるのは、自分よりも7歳も下の彼女だけれど。
国歌斉唱・国旗掲揚でカメラと聴衆の瞳を独占するのは、自国のそれでは無いけれど。
そしてたぶん、
カメラの向こうのお茶の間には「 “あの” ヴィヴィちゃんも、もう23歳。そろそろオワコンか~~」と、他局にチャンネルを切り替える人もいるだろうけれども。
それでも大丈夫。
自分は屈辱を感じたりなどしていない。
何故なら、ちゃんとリンクサイドで見守ってくれているチームの存在があるから。
グランプリシリーズ2戦目で「四回転トウループに挑む」という、チームの課題をきちんとクリアして見せたから。
まだまだ足りない部分、修正が必要なところは、自分でもきちんと理解出来ているから。
ショーンコーチをはじめ、ジャンプコーチのクリス、トレーナー、そして様々な役割で自分を支え続けてくれている人達を信じていれば大丈夫。
だから私は、
ちゃんと前を見て、胸を張ってこの場所に立っていられるのだ。