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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
「とても素晴らしいですよね。ただ今回のシリーズを通して苦戦を強いられてきた篠宮選手。2試合とも2位でしたので、シリーズ獲得ポイント数は26P。今年からシニアに参戦してきたロシアの15歳――エリーナ・コスティリョワ選手は、2試合とも1位の30Pでした」
「ロシアの17歳――マイア・シャタロワ選手と篠宮選手が同率3位というポイント数でしたね」
「そうですね。とは言っても、今期はシーズンを通して、どんどん新たな挑戦をしてマイナーチェンジし続けている篠宮選手ですので、このFS次第で表彰台の一番上に――という期待も出来ると思います」
「荒河さんも、そして全フィギュア・ファンも期待する、篠宮のFS。一瞬たりとも目が離せませんね」
清水アナウンサーと荒河氏が、アップ中の各々の選手のジャンプを解説していると、6分間練習が終了し。
最終滑走者のヴィヴィは、ショーンコーチ達に伴われてバックヤードへと姿を消していった。
5名の女子選手がおのおのの実力を発揮し、五輪シーズンに相応しいハイレベルな演技を披露したのち。
テレビ画面にはFS最終滑走にして、今大会を締め括る、ヴィヴィの姿が映し出された。
「SP1位から折り返してのFS―― 曲はマヌエル・デ・ファリャ作曲、バレエ音楽『恋は魔術師』より」
23歳の成熟した女性――には程遠く、15歳の少女が如き華奢すぎる肢体。
その上半身を絡め取るように黒い蔦が絡み付き、更には煌めくスワロフスキーに模られた黒い血痕が大小重なり合い。
そこから伸びたスカート部分は、ビロード、サテン等複数の布地が枯葉の様に折り重なり。
その僅かな隙間からは、炭が燃え盛った後の熾火(おきび)を連想させる、鮮やかな炎の朱色が覗いて見える。