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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .

けれど、

「その亡霊を除霊しようと、悪霊退散しようと、ここまで もがき続けてきたんですけどね」

「うん」

「でも、そんなの、やっぱり無理でしょ――って」

やけっぱちにも聞こえるヴィヴィの言い分に、カメラ越しの三田が「え?」と当惑の表情を浮かべていた。

そんな相手の目を見据えたヴィヴィは、確固たる意志を宿した瞳で続ける。

「だって、その亡霊は “過去の自分” だから……。だから、私や周りの人の脳から物理的に消去する事も出来ない」

そう。

私にとっての亡霊は、匠海じゃない。

私にとっての亡霊は、

過去に囚われ続ける自分自身だ。

「過去を無かった事には出来ないし、目を背け続ける事が解決になるとも思えない。だったら、亡霊ごと飲み下して、消化して、自分の血肉にして、うまく飼い殺していくしかないのかなって」

大事なのは自分自身の決意であって、相手では無い。

揺るぎ無い決心、そして、過ちを認め繰り返さぬ強さを持つしかないのだ。

「……そうか」

そう頷く三田の目には、自分はどう映っているのだろう。

そして、画面の先の人々には、どう感じられるのだろう。

気にならないと言えば嘘になる。

だが、つまるところ誰に何とそしられようと、自分の根底はこの先変わる事はないのだろう。

「もう本当、これ以上無く恥ずかしいんですけれどね……。空回りばかりして、なのに過去の栄光に縋って。もういい年なのに子供じみてて、無様でみっとも無くて……」

4年前の五輪のFS。

国内外の期待を一身に背負いながらも、見るも無残な滑りをし、更にはリンクサイドで正体不明になり。

その後 メディアを避け続け。

翌シーズンはというと、笑顔を放棄し己の殻に閉じ籠もり、周りを思いやる余裕を欠いていた。

「そんなことないよ」と慰めてくれる三田にだって、多大なる心配をかけたのに。

けれども、まだこうやって傍で見ていてくれる。

ああ、私はこんなにも恵まれていて、こんなにも愛されていて。

そして、沢山の期待を寄せて貰える人間に、いつの間にか なっていたのか。

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