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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

『……そこ、で、首を……』

 あの人の寝室の、

 そのドアノブにネクタイで首吊りをすると示した自分。

『駄目だ』

 金色のドアノブにネクタイを絡ませる白い手は、

 震えなど一切見せず。

『遠いよ。もっと俺の傍で逝って? そうだな、これがいい……』

 長さを調節しながら結ばれる、輪っかの先っぽ。

『ここに掛けて、俺の傍で逝って?』

 強度を確かめる為に、ぐっと下へ引き。

『遺書、残してるのか?』

 追憶の中のあの人に促される様に、

『日記は?』

 自分の為の絞首台へと、

 己を差し出す。

『ほら。もっと力込めて』

 扉に凭れ掛かった細い背中が、

 徐々にずり下がっていく。

『全然、苦しくない……。体重掛けて』

 本当だ。

 全然、

 全然、苦しくなんて無かったんだ。

『そう…………、いい、気分だ……』

 全ての苦しみから、やっと解放される。

 やっと、

 己の呪われた運命から、逃れる事が出来る――。

 酸素が枯渇し、

 薄れ始めた意識。
 
 その時のヴィヴィは確かに、



 “いい気分” だった――。








「死なせて……」

 深夜に駆け付けてくれた、精神科医にも。

 泣いて「そんな哀しい事、言わないデ……っ」と止めてくれた、同居人にも。

 一晩中抱き締めてくれていた、双子の兄にも。

「死なせて……」

 同じ言葉を繰り返し、

 泣き叫んで懇願し。
 
 精神安定剤と睡眠導入剤を投与され。

 強制的に眠らされた意識――。
 


 そんな中、

 ヴィヴィは夢の世界に立っていた。
 
 そこは見渡す限り、白一色の空間だった。

 まるで天国の如き、絵に描いた様な安寧の地に思える一方、

 “無” という概念を、身を以て知らしめられる。

 ――そんな息苦しさも、同居していて。
 
 居心地悪そうに身じろぎした華奢な身体。

 その身に包んでいたのは、何故か、

 襲われた時に纏っていた、ストライプのシャツワンピで。

「……――っ」

 あの時、

 確かに薄い胸に滴り落ちた、赤い血液。

 自分の命を、何とかこの世に繋ぎ止めている “心臓” を、

 内からも外からも犯された気がして。

 右手が薄いシャツの胸を、ぐしゃりと握り締める。

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