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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第21章 .
日本各地とオックスフォードをオンラインで繋いでの五輪壮行会など、慌ただしいスケジュールも終え。
周囲も双子自身も3度目となるオリンピックに向け、気持ちも身体も整っていた。
午前中に行われたホームリンクでの調整を終えたヴィヴィは、屋敷に戻りクリスと同居人・ダリルと昼食を取り。
その後は防音室に籠もり、これからしばらく触れることが出来ないであろうピアノとヴァイオリンを、たっぷり愛でていた。
ヴァイオリンの木の肌触り、指先に伝う弦の震え、そして左耳に心地良く入ってくる厚い音にうっとりと酔いしれていたヴィヴィ。
しかし反対の右耳に「今夜、経つんだろう?」と囁かれれば、驚嘆したヴィヴィは文字通り、その場で5㎝くらい飛び跳ねた。
「うわぁ! び、ビックリした……っ」
弓を持った右手で耳を塞いだヴィヴィが背後を振り返ると、案の定イタズラが成功し してやったり、な顔をしたフィリップが立っていた。
「こ、今夜……? ああ、うん。明日が開会式だからね、前日入りするわ。フィリップは?」
「俺は明日にイタリア入り。開会式のロイヤルボックス(貴賓席)からヴィーに手を振るから、振り返してね?」
そう無茶振りしながら肩までの髪を色っぽく掻き上げる男にも、ヴィヴィの顔は(-_-)の顔文字通り。
「絶対にいや~~」
メディアは絶対にそういう場面を撮り逃がさない。
なんならカメラ2台構えで、互いの表情を映し撮るだろう。
そもそも、ヴィヴィがフィリップに愛想よくする必要性も感じないので、手なんて振り返すはずもない。
「ヴィーの塩対応で、今夜のオカズも整ったな。あ、そうそう。俺、個人戦の女子は観戦に行くからな?」
「え゛……っ!?」
これまでも散々「試合に来るな!」と言いきかせてきたのに、この期に及んで “大多数の国で放映される五輪の場” で、わざわざ試合観戦するとな!?
露骨に嫌そうな表情を浮かべるヴィヴィに、フィリップは珍しく肩を竦めながら続ける。
「いやだって、モニャコの女子選手が出場するからさ? まあSP止まりで、FSまで進めないかもしれないけれど」