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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第22章
「個人戦 女子SPは自国の選手を応援しに行くからね」との言葉通り、澄ました表情で貴賓席で観戦していたフィリップ(一応、モニャコ公国 皇太子)。
しかし、次に画面に映し出されたヴィヴィはというと、一切そちらを見上げもせず。
教え子を出迎えるショーン・コーチとクリスの元へ、飛び切りの笑顔で戻って行くのだった。
『残念ながらそれは無さそうだね、ふふふ』
『噂はただの噂だったという事だね(笑)』
その後、SPの得点が読み上げられ、キスアンドクライのヴィヴィはとても満足そうな笑みを浮かべていた。
そんな画面の中の自分を、ただひたすらボ――っと傍観していた、その時。
「ちょ~~~っ!!!」
大音量の突っ込み?が、ヴィヴィを現実の世界へ引き戻した。
「ちょっと! なんて顔してんの、ヴィヴィったら」
凄い剣幕で妹分の顔を覗き込んで来たのは、待ち合わせをしていた下城 舞だった。
「ん……?」
何の事を言われているのか?と首を微かに傾げたヴィヴィに、
「「ん?」って……。え!? 無自覚なわけ? もんのっっっっっすっごぉい、仏頂面だったけど!?」
「……? そう、だった、かな?」
「っていうか、殺気を放ちそうなほど、目が座ってたわ……怖……っ」
ホテルのレストランで夕食を採るだけなのに、きちんとワンピース姿の舞は、上下ジャージ姿のヴィヴィを見下ろしながら色んな意味でドン引きしているようだった。
ご指摘通り全くの無自覚だったヴィヴィは、いつの間にか強張っていた己の頬を指先でむにむにとマッサージするしかない。
テレビ画面の中には、滑走後のインタビューで「練習してきた事を全て表現出来た、自分でも会心の出来だった」などと珍しく手放しで己を褒めているヴィヴィがいて。
画面上のヴィヴィと、今 目の前にいる本人を見比べた舞は、不思議そうに続ける。
「そんなに王子様との間をからかわれるのが嫌だった、とか?」
「王子……? ああ、そういえば、映ってたね」
舞の推測に、あからさまにキョトンとしたヴィヴィに、相手は大げさに肩を上げてみせる。
「なんだ、違うのか。さ、ごはん行こう~~、お腹ペコペコ~~」