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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 確かに、オックスフォード周辺には湖が沢山ある。

 スタンド・レイクに、ホースシュー湖、ボウムア湖。

 それに確か、もう少し離れたところには、クリーブランド・レイクス自然保護区なんてのもあった気がする。

 湖面の遥か先には緑が生い茂っており。

 ここから目に入る範囲には、家らしきものは1軒も無かった。

 開放的なその光景に、ふっと瞳を細めた。

 その瞬間、

「ぐぅぅうううう~~」

 静かなリビングに響いたのは、色気も糞も無い、ヴィヴィの腹の虫。

「ぷ……っ あははっ! もう、ヴィヴィのお腹の虫は、正直過ぎるだろう!」

 妹を拘束した両腕をやっと解き、ソファーに仰け反って爆笑する匠海に、

 ようやく両腕が自由になったヴィヴィはというと、羞恥から真っ赤になった頬を両の掌で覆った。

「うぅ~~……っ」

(だ、だって……っ もう、お昼だし! 朝ごはん食べてないしっ ていうか、昨日は晩ごはん、食べてないんじゃない?)

 そう頭の中で自分の正当性を主張する妹に、兄は「くっくっくっ」と未だ笑いを零しながら問い掛けてくる。

「何がいいかな? もうランチの時間だから、パスタ? リゾット? それともサンドウィッチ?」

「……作って、くれるの……?」

 今や拘束を解かれた兄の両太ももの間で、ヴィヴィは恐るおそる尋ねる。

「ああ、もちろん」

「……リゾット……」

「チーズ? トマト?」

「ト、トマト……」

 ちらりと匠海を見上げれば、微笑みながら自分を見下ろしている兄が、そこにはいて。

「了解。ほら、甘えん坊のヴィヴィ。少しの間だけ、お兄ちゃんを解放してくれ~~」

 まるでブラコンの妹よろしく、兄をソファーに引き留めている状態のヴィヴィに、

 匠海は心底うんざりした声で、そう窘めてきた。

「んな゛……っ!? お、お兄ちゃんが、ヴィヴィを――じゃなかった、私を拘束してたんだもんっ!!」

 そう喚いたヴィヴィは、まるで飛び退く勢いでソファーから降りた。

「はは! 久しぶりに元気な声が聞けた」

 白い歯を零した匠海に、頭をガシガシ撫でられたヴィヴィ。

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