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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章   

 もう二度と、兄の手料理なんて食べる機会は無いと思っていた。

 しかもどう考えても、自分の為だけに、わざわざ作ってくれた料理。

 腹の底からふつふつと湧き上がる嬉しさに、ちょっと胸一杯になりながらも、

 しっかり味わったヴィヴィは、「ごちそうさまでした。ありがとう」と素直に感謝を口にした。

「ねえ、クリス達は……?」

 2人分の食器を手にしたヴィヴィが、立ち上がりながらそう尋ねれば、

「さあ?」

 とぼけた返事を寄越す兄に、ヴィヴィは「え……?」と聞き返す。

「ヴィヴィ、コーヒー淹れてくれる?」

「え……? う、うん……」

 答えをはぐらかされたヴィヴィは、それでも食後のコーヒーを淹れるべく、キッチンへと消えて行った。

 コーヒーを飲んで、少しまったりして。

 歯磨きする為にリビングから出たヴィヴィは、少しこの施設を探検することにした。

 廊下を挟んでリビングの真向かいにある、バスルーム付きのベッドルーム。

 その右隣りには玄関ホールがあり、奥にはもう1つのバスルーム付きのベッドルーム。

 後はバスルームにランドリーという、どう見ても平屋建て1軒屋のそこ。

(1棟貸しのロッジか、貸別荘……?)

 兄に拘束されていた時から、他人の気配を感じなかった。

 何となく、自分達以外は居ないのだろうなとは思っていたが、本当に2人っきりらしい。

 戸惑いながらも、歯磨きという当初の目的を果たしたヴィヴィは、顔を洗うついでにシャワーでも浴びようかと思い。

 けれど着替えが見当たらないことに首を傾げながら、リビングへと引き返した。

「お兄ちゃん……、私の荷物は?」

 戸口に首だけ突っ込み、そう尋ねれば、

「あ~~、忘れてた」

「え?」

「着替え? 持ってくるの、忘れてた」

 しまったという表情を浮かべる兄に、

「えぇ……」

 妹は脱力した声を上げた。

「とりあえず、バスローブ着れば? 今着てるのは洗濯して」

 匠海のその助言は、当然のものだったが、

「……え……?」

 バスローブという、今の自分からしたら無防備な物を纏う行為に、ヴィヴィは躊躇った。

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