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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章
シャワーを終え、髪を乾かし。
備え付けのオフホワイトのバスローブを纏ったヴィヴィは、やはり膝丈の裾を不安げに押さえながら、リビングへと戻った。
「さっぱりした?」
ダイニングテーブルでノートPCを弄っていた匠海が、妹に微笑み掛けてくる。
「う……うん。あ、あのね……。スマホが無いの」
(先程 味見出来なかった)咽喉仏を見つめながら、ヴィヴィはそう遠慮がちに主張してみる。
「スマホ? ああ、屋敷に置いて来たからね」
「そう……。ここ、電話無いんだね? お兄ちゃんのスマホ、貸してくれる……? クリスに電話したいの」
先程覗いた2つのベッドルームには、何故か電話の子機等が1つも見当たらなかった。
昨晩の自分の醜態を思い起こすに、クリスとダリルには、今この時点でも多大な心配を掛けている筈で。
だから、取りあえず元気でいる事と、昨夜のお詫びを伝えたかった。
ただ、それだけなのに、
「やだ」
「え……?」
何故か拗ねた様子で短く突っぱねてきた匠海に、ヴィヴィはちらりとその表情を確認する。
「何でさっきから、クリスの事ばっかり考えてる?」
そう言い募る兄の顔は、やはりどこか不服そうで。
「え? だ、だって、いきなり居なくなったら心配するでしょう?」
何せ、昨夜までの自分は記憶が曖昧とはいえ、
自分を溺愛してくれる双子の兄の前で「死なせて」と連呼していたのだ。
ヴィヴィの姿が見えなくて、今頃 血眼になって探しているかも知れない。
「大丈夫だよ」
「大丈夫……?」
兄の返事の意味が判らず、金色の頭が微かに傾く。
「両親もクリスも、俺がヴィクトリアを連れて、オックスフォードを離れた事を知っている」
PCを閉じながら立ち上がった兄のその言葉に、ヴィヴィは瞳をぱちくりとさせた。
「え……?」
オックスフォードを離れている?
匠海の言葉を頭の中で反芻したヴィヴィは、更に首を傾げる。
それならば “ここ” は一体、何処なのだ?
それに、今、
兄は “ヴィクトリア” と呼ばなかったか――?