この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第3章
「ヴィクトリア。気持ちいいんだね?」
よせばいいのに、わざわざ言葉にしてくる兄に、
妹は渾身の力を振り絞り、拘束された両腕を兄の掌へと押し付け、これ以上揉まれぬようにと抵抗した。
「ん? ああ、もっと強く可愛がって欲しかった?」
解っていて、敢えて言葉でも虐めてくる匠海に、
「ちがっ や……っ ん、あ……、やぁ~~っ」
言葉では違うと否定しながらも、きゅうと乳房を絞られると、抵抗していた筈の両腕が緩んでしまった。
「キス、していい?」
何度目か分からぬ兄の問いに、ヴィヴィは無意識に零れる喘ぎを堪える為にも、
親指の付け根を唇に押し当てて、必死に抵抗した。
「駄目か……。じゃあ、こっちが先だ」
こっちってどっち?
そう思った瞬間、
「ぅ……っ」
ちくんと感じた痛みに、白い眉間が微かに寄る。
少し頭を起こして確認すれば、拘束された両腕の下、
乳房を掌で覆ったままの兄が、その間に口付けていて。
何度も繰り返されるその痛いだけの行為に、
手の甲に押し当てた唇の隙間から、苦痛の声が漏れていた。
「くそ、こんなところにまで……」
そう一人ごちる兄を不思議に思い、再度 視線を向ければ、
忌々しそうに蔑む瞳を湛えた匠海が、そこにはいて。
自分の肌に残る、幾つかの鬱血の痕。
その上から痛みを感じる強さで、所有印を刻み直していく兄の姿は、
他の男に穢されて傷を負った今のヴィヴィには、見るに堪えなかった。
「……――っ」
望まぬ形で強姦未遂にあった女に、こんな酷い仕打ちをする男がいるだろうか――?
ヴィヴィの常識を総動員させて考えてみても、
自分を本当に愛してくれる男ならば、
時間を掛けて、優しい言葉で慰め。
「危険なんてもう無い」と安心出来るまで、抱き締めてくれて。
そして、何十日何百日と経った頃、
「自分の愛する人となら大丈夫」と気付いた女性を、
男性は優しく丁寧に愛してくれる。
――それがヴィヴィが想う “誠意のある男の対応” だ。
だが、現実には、
自分の愛した男は、襲われた翌日に “全く同じ手法” で自分を貶めようとしてくるではないか。