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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第4章     

 両親が引き止めるのを、半ば強引に振り切ったヴィヴィは、所属しているオックスフォードS・Cへと向かった。

 そして真っ先に訪ねたのは、ショーン・ニックスのところ。

 7日ぶりに直接対面した双子のコーチは、教え子を目にした途端、へなへなと近くの椅子へとへたり込んでしまった。

「コ、コーチ? 大丈夫ですか?」

 慌てて傍に駆け寄ったヴィヴィ。

 皺が刻まれた手で両手を取られ、師の手が震えている事に気付いてしまった。

「だ、大丈夫……、じゃない。心配したよ、ヴィヴィ」

 常にハの字を描く眉尻を、更に下げたショーンは、御年75歳。

 ヴィヴィとて、穏やかな老後(?)を送って貰いたいと常に思っているのだが。

 なかなかトップに立てなかった昨年に引き続き、

 今年もシーズンイン前から、その心拍数に負担を掛けてしまったようだ。

「本当に、ご心配をお掛けしました。でも、もう、大丈夫です」

 恐縮しつつ、でもやっと恩師の元に戻って来られたヴィヴィの頬は、やはり嬉しさから緩んでしまって。

 それにつられ、ショーンもやっと頬を緩めてくれた。

「ああ……、ヴィヴィは本当に、とても強い子だ。戻って来てくれて、心から感謝するよ。本当に、ありがとう……。あ、でも、無理をしてはいけないよ?」

 そう言ってくれたショーンの手は、とても暖かくて。

 自分の居場所に戻って来れた嬉しさを噛み締めながら、ヴィヴィは大きく頷いて見せた。 






 母方の実家・エディンバラから帰国して、丸々2日間 氷の上に乗れなかった。

 2日間――

 本当はもっと、スケートから離れた気になっていたが、実際の時間はまだ それだけしか経っていなかった。
 
 事情を知る柿田トレーナーにも半泣きされ。

 彼のサポートを受けながら、ヴィヴィは念入りにストレッチと陸トレを行った。

 そして「やっと氷の上に乗れる!」と、ウキウキするヴィヴィを、

「ヴィヴィ~っ! ディナーにしましょ~~っ!!」

 空気が読めないのか、読む気が無いのか。

 大声で娘を呼んだ母・ジュリアンに引きずられ、何故かヴィヴィは建物の外へと連れ出された。

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