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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

 昨年の8月半ば。

 真行寺兄妹は、オックスフォードの双子の元に遊びに来てくれていた。

 1週間 屋敷に滞在し、連れだって色々と観光もし。

 けれどその滞在期間中、にこりとも笑わないヴィヴィに、

 初めは驚いていた真行寺兄妹は、何も追及しては来なかった。

 笑わない以外は、いつも通りのヴィヴィだったから――というのもあったのだろうが。
 
 だが当たり前だが、2人にはとんでもなく心配を掛けていたのだ。

「……心配掛けて、本当にごめんね……」

 落ち着いた色味に染められた髪を見下ろしながら、ヴィヴィは心からの謝罪と、そして心配してくれたお礼を口にした。





 夕刻、ヴィヴィが来ると知っていて、早く帰宅してくれた兄の太一。

「ヴィヴィちゃん、おかえりなさい」

 心底ほっとした微笑みを浮かべてくれるその人に、

「ただいま、太一さん。えへへ、2泊3日、お世話になります~」

 ヴィヴィはそう甘えた声を出して、再会を喜んだ。

 早い時間だったので、まだ両親は帰宅していないらしく、

「今年の夏も行きたいな~。私、あれが超気に入っちゃって!」

 3人で囲んだ夕食の席、マドカが食前酒のキウイ酒を嗜みながら、ヴィヴィに笑い掛けてくる。

「あ~、野外コンサート?」

「うんっ 昼下がり、外の会場で芝生の上でピクニックしながら、なんか眠気を誘うクラッシックの生演奏流れてて。で、シャンパンとかワインとか飲んで~、超楽しかったもんっ」

 英国では、日が長くて涼しい夏を最大限に活用するためなのか。

 6月から8月末にかけて、各地で野外イベントが数多く開かれる。

 ロック・フェスティバルをはじめ、ジャズやクラシックのコンサートの後に花火大会がパッケージされていたり、

 貴族の古い館の庭を利用して行われる、オープン・シアターでのシェイクスピアの芝居が上演されたりもする。

「はは。実際に円、寝ちゃってたしな」

 隣に座る妹に瞳を細める太一の表情は、本当に優しさに溢れていて。

 かつての匠海を彷彿とさせるその瞳に、ヴィヴィの灰色の双眸が一瞬陰り。

 けれど、それも一時のこと。

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