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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

 ジュリアンとは昨シーズン、何度も試合会場で会っている。

 ペアの成田・下城組や、ジュニアの子達のコーチとして帯同していた、母には。

 それに父・グレコリーも多忙の身ながら、全日本と国別対抗戦には駆け付けてくれて。

 バックヤードでも滞在先のホテルでも、話す事も出来た。

『じゃあ、なんなのよ?』

「……来年は、参加する……」

 弱々しく呟き、逃げた娘に、

『ヴィヴィ、去年もそう言ってたじゃない!』

 母のその怒りは、当然のもので。

「もう、リンク行く時間だから……、切るね」

 その言葉通り、近くのスケートリンクに、深夜の貸切予約を入れていたヴィヴィ。

 一方的に終了を告げて、耳からスマホを離し。

『ヴィヴィ? ちょっ ヴィ――』

 母の詰問から目を背ける為に、細い人差し指の先で通話をオフにした。

 (当たり前だが)その後も鳴り続けるスマホをベッドに放り出し、

 ヴィヴィは手早く支度を済ませ、ホテルの部屋を後にした。









 翌日、7月4日(火)。

 仙台から東京へと移動したヴィヴィは、田園調布へと直行した。

 伝統的な日本家屋の広大な邸宅の呼び鈴を鳴らせば、すぐに門が開錠されて。

 打ち水された小道を辿りながら玄関へと着くと、中から凄い勢いで玄関扉が開かれた。

「あ、マドカ~♡」

 親友の顔を認めた途端、安堵と嬉しさを滲ませた笑顔を浮かべたヴィヴィに対し、

「―――っ ヴィ~~ヴィ~~っ!!」

 何故か目の前の真行寺 円は、そう唸りながらべそをかいてしまって。

「ど、どうしたの、マドカったら?」

 目を白黒させるヴィヴィの胸に、マドカが飛び込んで来る。

「だって、だってぇ~~、ヴィヴィが! ヴィヴィが、笑ってるんだもん……っ」

「………………」

 ぎゅうぅ~~っと柔らかな身体に抱き着かれたまま、ヴィヴィは言葉を失ってしまった。

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