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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第5章
中で受け留めている兄の分身は、行き場の無い衝動を持て余しているかの様に、ビクンビクンと大きく震え。
それはまさに、怒張と言うに相応しい存在感だった。
「………………」
胎内で感じる匠海と、目の前の匠海。
どちらを信じていいのか、判断が付かず。
途方に暮れた表情を浮かべたヴィヴィ。
兄妹の周りに漂う夜来香を、力の入らない腕を持ち上げて一輪摘まみ。
10㎝大の花径の中心に、ちゅっと唇を押し付けると、
それを目の前で興味深そうに見つめている、匠海の口元へと運ばせる。
色素の薄い大き目の唇が、ちゅうと愛おしそうに藤色の薔薇に口付け。
けれどその上の灰色の瞳は、
少しも揺らぐ事無く、妹の大きな瞳だけを見据えていた。
「……~~っ」
どうして、自分の全ては、
匠海の一挙手一投足に、これ程までに振り回されるのだろう?
たったそれだけの兄の行動に、華奢な躰がかぁっと燃え上がり。
己を貫く剛直を締め付けながら、
目の前の美し過ぎる男へ、まるで救いを求めるように両腕を伸ばしてしまう、愚かな自分。
突っぱねて欲しい。
抱き留めて欲しい。
父として夫として、まっとうな人生を歩んで欲しい。
兄として共犯者として、自分とどこまでも堕ちて欲しい。
相反する望みと、抗えぬ独占欲。
自分でもコントロール出来ない感情を持て余す妹を、兄は決して見捨てる事など無く。
「もっと、一つになろうね?」
細い背と腰を撫で擦られながら、耳元に吹き込まれた誘惑の言葉。
その甘言に一も二も無く飛び付いたヴィヴィは、広い胸の中でこくりと頷いた。
ゾクゾクと身を包む震えが収まらなかった。
自分の躰がどうなっているのか、
もうそれすら、把握する事も ままならず。
「震えなくても、怖いことなんてしないよ」
「愛してるんだ、ヴィクトリアっ」
繰り返される兄の睦言に、ただただ必死に縋り付く。