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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
手早くディナーを摂り、双子は早々にオックスフォードSCへと向かった。
コーチのショーン・ニックスとの再会も そこそこに、2人が取り組み始めたのは、やはり双子プログラム。
他のプログラムは個々で頑張れば何とかなるが、
特に今年の双子プログラムはタンゴで、足技の応酬で難易度が高い為、とにかく揃っての練習が不可欠だった。
「TWI(Twinkle ICE)まで 後、18日!」
「超特急で、調子、戻さないと……」
まずは床上での確認。
リフトやバックフリップ(バク転)、細かな足技を合わせていき。
互いの手の位置、腰の位置、蹴るタイミング等を確かめ合い。
「じゃあ、ラスト……」
片手を繋ぎ合い、互いに身体を正面に開き。
クリスに手を引かれ、ターンしながらその首に片腕を回したヴィヴィは、
兄の片膝の上に、正座の状態で飛び乗り。
「ぴょんと乗って、か~ら~の~、飛び蹴り~~っ」
明るい声で発したヴィヴィ。
クリスの太ももの上から、折り畳んだ外側の脚を大きく振り上げて飛び上がり、空中で開脚し。
そのまま床に開脚状態で降ろされた妹は、腰を落とした兄とホールドを組んだまま見つめ合った。
「うん……。勘、戻ってきた……」
満足そうな声を上げながら、ヴィヴィを支えて立ち上がらせたクリス。
「うん。いいね。帰国前と身体のキレも大差ない。けれど――」
傍で付き添ってくれていた柿田トレーナーは、そこで区切ると、
何故か呆れた瞳を、ヴィヴィにだけ向けてきて。
「ていうか……『ぴょんと乗って、か~ら~の~、飛び蹴り~~っ』って。色気も糞も無いなあ、ヴィヴィは……」
柿田とは15歳の頃からの付き合いなのに、今更そんな突っ込みをされても。
「氷の外での色気なんてものは、現役引退してから着けばいいんですぅ~~」
一応、皆が「氷上では色気ある」と言ってくれるので、
ヴィヴィはそんな悔し紛れな言い訳しながら、白い歯を「い~~っ」と剥いたのだった。