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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 フリフリ白エプロン姿のダリルが歌えば、それは異様な迫力があり、

「♪velut pisciculus.
 まるで お魚みたいよね~?♪」

 濡れたキュウリを握り締めながら、乗ってきたヴィヴィに、

 ダリルも節くれ立った指で、ズッキーニを撫で擦りながら続く。

「♪is qui desiderat tuam fonticulam.
 それは あなたの泉を 恋しがっている~♪」

「♪Ah~~!♪」

 おでこに手の甲を置き、流し台にしな垂れかかったヴィヴィは、ノリノリで “喘ぐフリ” をし。

 更に調子に乗ったダリルは、今度は手にした緑の太いものに、頬擦りの真似をし始める始末。

「♪mea manus est cupida.
 わたしの手は どうしても~

 coda,codicula,avida,avida!
 よくばりやさんの 尻尾を、棒をっ

 mea manus est cupida
 わたしの手は どうしても~

 illam captare.
 ソレを 捕まえたいの~♪」

 紅い唇で うっとり謳い上げるダリルに、円はもうこれ以上、耐えられなかったらしい。

「ぅぎゃ~~っ!? ダ、ダリルとヴィヴィが、セっ セクハラまがいの歌、歌ってくる゛ぅ~~っ!!」

 焦茶の頭を両手で抱え、涙目で絶叫する円に、

「アラ? これはちゃんとした “芸術” ヨ。ねえ、ヴィヴィ~?」

 そう確認するダリルに、したり顔のヴィヴィも、

「うむ ( ̄,_ゝ ̄) イカニモ」

 キュウリを握り締めながら、深く首肯する。

「ちなみに mammulae(おっぱい)の歌もあるわヨ~?」

 偽物の乳房を、両手で下からゆっさゆっさしてくるダリルに、とうとう限界を迎えたらしい円は、

「~~~っ!? ふぎゃ~~っ!!!」

 顔を真っ赤にし、脱兎の如く 広いキッチンから逃走してしまった。

「うふふ、か~わい~~❤」

 イケイケ(死語)の外見と異なり、意外と初心(うぶ)な円を、おちょくって愉しんでいる風情のダリルに、

「ダリル、からかい過ぎ……」

 自分もノリノリだったくせに、そう窘めてみるヴィヴィ。

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