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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
『うん。だって、私、ヴィヴィだし。ヴィヴィ と ヴィヴィアン って、混同しそうじゃない?』
無表情のまま続けるヴィヴィ。
――昨シーズンのヴィヴィは “黒ヴィヴィ様” だったので。
『は、はあ……』
何だか適当な事を話してくる相手に、若干押され気味のヴィヴィアン。
『で? イギリス来た事ある? 無い? てか、興味ある? 無い?』
何故か矢継ぎ早に質問を放ってくるヴィヴィに、ヴィヴィアンは目を白黒させ。
『え? え? い、行った事ないっ で、でも興味は、あるわっ』
そのリー選手の返事に、ヴィヴィは至極満足そうに頷いた。
『来年の夏、ヴィヴィとクリスで、英国でショー立ち上げるんだ。良かったら出てくれない? てか、出て!』
いきなり出演交渉し始めたヴィヴィは、ずいずいと身を乗り出し、
『え……? わ、私があなたのショーに?』
両掌を胸の前にかざしながら、慌てて返して来るヴィヴィアンの両手首を、がっしりと掴んだヴィヴィ。
『ん。やだ? どしても、やだ!?』
何でそんなに必死なのか。
目の前の黒い瞳をじいと無表情で覗き込むヴィヴィは、今から考えたら怖かっただろうなと思う。
『や、や、な訳じゃないけど……』
しどろもどろになり、きょろきょろと辺りを見回し始めた彼女の手首を、やっと離し。
『じゃ、考えておいて? アンが出てくれたら、きっと英国のお客さん、すっごく喜んでくれると思うんだ』
何しろ彼女の実力と安定性は、他の女子選手を抜きん出て、素晴らしかったから。
『う、うん……。考えておく』
自信満々なヴィヴィに、タジタジのヴィヴィアンは、それでもそう答えてくれた。
『よし。あ、来てくれるなら、英国の美味しい日本料理店、案内したげるよん』
『え、英国料理店じゃなくて、日本料理店……? ってなんでよ?』
そこでやっと リー選手らしい、軽やかな笑い声になって。
『だって、英国の料理、あんまり美味しくなんだもん』
言ってはならぬ真実をゲロったヴィヴィは、ぺろっと小さく舌を出して誤魔化した。