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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章
「ヴィヴィ……じゃなかった。ヴィクトリア選手。今日の “衣装のポイント” は、何ですか?」
バックヤード――順調に進んでいくショーの裏側では、
制作のITV(英国テレビ局・Channel 3)のアナウンサー役に抜擢されたクリスが、
自分も衣装のまま、慣れない様子で妹へとマイクを向けてきて。
「ん~~、腹筋?」
“衣装のポイント” を尋ねられたのに、そんな答えを寄越すヴィヴィに、
「はい……?」
クリスは無表情のまま、短く問い直してくる。
「だからぁ~、この めっちゃ鍛え上げた、腹・筋・デスっ!!」
そう力を込めて発したヴィヴィは、黒の丈短ビスチェとミニスカートの間に露出した薄い腹を、掌でぺちんと叩く。
確かに。
真っ白の皮膚の下、薄らと割れた腹筋は窺い知れるが。
やはり全体的に身体が薄っぺらいので、どこからどう見ても “めっちゃ鍛え上げた” には程遠く。
嘆息を零すクリスの目の前、
ヴィヴィは発した言葉とは まるで正反対の事を思っていた。
(キ、キスマークっ 消えて、良かったぁ~~……)
今から19日も前――日本に帰国していた最終日。
上の兄にヘソ脇に、幾つもの鬱血の痕を点けられてしまい。
それは まるで “匠海の執念” でも込められているかの様に、なかなか消えてくれず。
もうどう仕様も無くなったら、絆創膏 か タトゥーシール等を貼って凌ごう、とまで思っていた。
「ヴィヴィ、真面目に……」
周りの関係者がくすくす笑う中、妹を窘めてくるクリスに、
「こりゃ、失敬」
ペロッと舌を出したヴィヴィが、黒骨組みに赤レースを貼った 小道具の扇子で、おでこをぺちんと叩けば。
まるで日本の落語家を模した おちゃらけに、各国の関係者は爆笑していた。
けれど、このままでは収集が付かない、と踏んだらしいクリス。
くるりとカメラを振り返ると、テレビ目線で語り出す。
「ヴィクトリア選手はショー直前で緊張し、上手く衣装の説明が出来ないようですので、僕が代わりに」
そこで言葉を一旦 区切ったクリス。