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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第6章     

 そして、



Title:今からそちらへ向かう

Letter:

 ロンドン経由だから、

 会場入りするのは ギリギリそうだ。
 
 2人のショー、楽しみにしている

 最終日、楽しんで。



 今朝0:30に届いていたが、ヴィヴィは爆睡して気付いていなかった、実の兄からのメール。

 それがエロ妄想に、更に拍車を掛けてきて。

「もう、やだぁ~~……。ぐすぐす」

 盛大な独り言を言いながら、しばらくその場で半泣きしていたが。

 数分後には、何とか立ち上がれるまでに回復し。

 虚ろに据わった灰色の瞳の下。

 薄い唇からは何故か、薄気味悪い “マザーグースの唄” の1つが唱えられていた。

「10人の男の子が 食事に行った

 1人が咽喉を詰まらせ 9人になった

 9人の男の子が 夜更かししてた

 1人が寝過ごし 8人になった」

 ひた、ひた――と。

 静かに階段を踏みしめる音が、縦長の空間に微かに響き。

「8人の男の子が デボンを旅してた

 1人がそこに残り 7人になった

 7人の男の子が 薪割りしてた

 1人が自分を割って 6人になった」

 踊り場に辿り着いたヴィヴィが、何故か「くふふ」と怪しい含み笑いを零す。

「6人の男の子が ミツバチと遊んでた

 1人が刺されて 5人になった

 5人の男の子が 法律に訴えた

 1人が裁判所に留まって 4人になった」

 眠れない夜に、羊を延々数えて昏睡状態になろうとする様に、

 ヴィヴィは数を数えると、落ち着くことがあって。

「4人の男の子が 海に行った

 赤鰊(ニシン)が1人呑んで 3人になった

 3人の男の子が 動物園に行った

 大熊が1人抱きしめて 2人になった」

 だから この詩は、

 どうしても落ち着かなければならない時、効果的なのだ。

「2人の男の子が ひなたぼっこしてた

 1人が日干しになって 1人になった

 1人の男の子が 寂しくしてた

 その子が結婚して そして誰もいなくなった」
 
 ――チャンチャン。

「うん、ちょっと落ち着いたぞ。今日は最終日、頑張ろう~~!」

 やっとそう、半ば無理やり アイスショーへ向けて、気持ちを切り替えられたのに。




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