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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
丹念に磨き上げられ黒光りした扉が、閉まるよりも早く、
ヴィヴィの華奢な身体は、匠海の逞しい胸の中に すっぽりと抱き寄せられていた。
妹が驚き、小さな悲鳴を上げても、兄は全く意に介さず。
己の肩程にしか届かない金色の後頭部を掌で包み込み、胸へと押し付け、
その下の細腰に巻き付けた長い腕は、1mmも離れたく無いとでも言う様に、ぴったりと互いの身体を密着させていた。
「……な、なに……?」
突然の事に戸惑いを隠せないヴィヴィは、されるがままの棒立ち状態で。
「何って……。俺はヴィヴィの “お兄ちゃん” だろう?」
「そ、そうだけど」
匠海の意味不明の返しに、ヴィヴィはまたもや どもってしまう。
「だったら妹に「いらっしゃい」のハグをしても、何らおかしくない」
「………………」
なるほど。
確かに家族が3週間も離れ離れの後に再会すれば(英国式に育てられたヴィヴィにとっては)ハグしてもおかしくない。
おかしくはない、けれど――
「……ハグ……長過ぎ、でしょ?」
それが1分近く続けば、たとえ家族間であろうと “おかしい” 筈だ。
というか今の自分に、身体を密着しあう抱擁はキツイ。
(こちとら昨日まで淫夢に悩まされた欲求不満女子だったんだぞこのやろお)
なのに、
「充電中……」
また意味の分からぬ事を呟く兄に、
「……はぃ……?」
冷ややかな相槌を返す妹。
「凄く……、凄く会いたかったよ、ヴィヴィ……」
「………………」
素直に自分の気持ちを言葉にしてしまう匠海に対し、ヴィヴィは沢山の言葉をぐっと呑み込むのみ。
会いたかった――?
それは、妹として?
元恋人として?
それとも……。
ふと湧いた疑問を、ヴィヴィはすぐさま打ち消す。
「ヴィヴィ」と呼ばれるのは、兄が自分を “妹” として扱う時だけ――。
つまり、
自分は兄に “妹” として求められているのだ。