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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第7章
「そうだな。だから、落ち着く」
少し大きめの唇を、にっと笑みの形に伸ばした兄。
つい先程、妹に求めた事を再度 強請る様に、こちらへと視線を寄越す男に、
「……ちょ、ちょっとだけ……だよ?」
ヴィヴィはそう条件付きで、自分の左手を匠海へ おずおず差し出した。
『髪でもどこでもいいから、ヴィクトリアに触れていたい』
兄のその願いを、紅茶を淹れるという交換条件と引き換えに、叶えてあげる為に――。
自分の左手が大きな掌の中に包み込まれ、その暖かさを感じた途端、
何故かトクンと、心臓が跳ねて。
「………………っ」
(な、なんでこれしきの事で……? 私達、もっと凄いこと、沢山……っ)
数えきれないくらい躰を重ねてきたのに、今更 初々しい反応をした自分の心臓に問い掛けるが、
当たり前だが、何の返事がある筈も無く(……あったら怖い)。
胸のときめきを誤魔化す様に、自由な右手で紅茶を飲んでいると。
同じ様に、繋いでいない左手でシャンパンを飲み干した匠海が、両手でヴィヴィの左手を握ってきた。
「……も、おわり……」
「ちょっとだけ」という条件通り、預けていた左手を抜こうとした、その時。
「……なに、それ……? すごい」
「ん?」
「ふわぁ……、気持ち、いい……」
大きな灰色の瞳をうっそりと細めた妹に、
「だろう?」
兄は得意気に白い歯を見せ、にかっと笑い掛けてくる。
その笑い顔の中に、中学生の頃の匠海の、あどけなさが一瞬 垣間見えて、
「………………っ」
(……なんだろ……、なんか、お兄ちゃん、可愛――……、~~~っ 何言ってんの!? か、可愛くなんか、ないもんっ)
27歳という立派な大人に対し、思わず芽生えかけた母性を速攻 否定した。
ヴィヴィの内心など、露知らず。
兄は楽しそうに、妹の手をマッサージしていた。