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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
7月26日(水)――ヴィヴィが日本から戻って来た3日後。
松濤の篠宮邸に滞在していたクリスも、英国へと帰って来た。
まだマンチェスターの実家にいるらしい、同居人のダリルは不在だけれども。
執事のリーヴと3人で、またいつも通りの日常が戻って来た。
そう、思っていた。
7月27日(木)。
早朝からのレッスンを終え、屋敷に帰宅するまでは――。
「……Shit……っ」
レクサスのF SPORTの助手席から降り立った瞬間、異変を嗅ぎ取ったヴィヴィが、そう口汚く吐き出せば、
「……ヴィヴィ、言葉遣い……」
妹を窘めた双子の兄は、いつもの無表情のまま運転席から姿を現す。
2対の灰色の瞳の先、煉瓦造りの屋敷を引き立たせる白い窓枠の向こう。
べったりとガラスに張り付いていたのは、他でもない自分達の両親。
――だけなら良かった。
灰色の瞳を緩めた父・グレコリーの腕の中、ちっこい人間が抱かれてさえいなければ。
「………………っ」
(リーヴ、電話なりしてよっ! ……って、たぶん、マムに口止め、されたんだよね……)
一瞬、執事の不手際を責めたヴィヴィだったが、すぐにそれを引っ込めた。
あの傍若無人な母の手にかかればきっと、どんなにベテランの執事でも太刀打ち出来ないであろうから。
ガラスの向こうの両親は、双子に向かって手をこまねいている。
たぶん「おいで、おいで!」と言っているのだろうが声は届かないので、どこか間抜けに見えた。
ヴィヴィは深く息を吐き出しながら、自分の身なりを見下ろす。
屋敷でバスを使うつもりだったので、
(スポンサーのプリングルス オブ スコットランドのマスコット)ライオン君が小躍りしているTシャツに、
ちびライオン君が大量にプリントされたショートパンツ、というラフすぎる格好で。
しかも、レッスンで ぼさぼさになった金の頭はひっつめていて、全然可愛くない。
1年3ヶ月ぶりに “あの人” の前に立つというのに、まさかこんな恰好で――。
ショートパンツに刻まれた座り皺を、焦って指の腹で伸ばそうとした、その手が止まる。
「………………」
(何……気にしてるん、だか……)