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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
『はい、生中継でお話をお伺いしました。世界中からトップスケーターが集まる大会ということで、非常に楽しみですね?』
男子アナの問い掛けに、女子アナが満面の笑顔で頷き、このコーナーを締め括る。
『本当ですね。いよいよ新しいシーズンの始まりで、各選手の新たなFSが発表されるというのも、とても楽しみです。東京テレビでは、明日夜6時半からの放送となります。どうぞご覧下さい――』
「日本! ヨーロッパ! ノースアメリカ!
フィギュアの三大勢力が、男女2名ずつ 計4名の団体戦で争うこの大会。
チームジャパン――男子でトップに立ったのは、やはり 篠宮 クリス選手」
9月30日(土)。
各局の夜のニュース・スポーツ番組では、本日の昼に行われた、ジャパン・オープンの結果が放送されていた。
「日英両国の注目を集める、クリス選手の今シーズンのFSは、フレデリック・ディーリアス作曲 『イングランド狂詩曲』」
英国の “モリス・ダンス” の衣装を模した、白シャツ、黒の膝下丈のパンツ、白ソックス。
そして脛に鈴に似た飾り、を凝らした衣装を纏ったクリスが、画面に映し出される。
「元恩師でもあり母でもある、ジュリアンコーチが見守る中、冒頭の4回転フリップ、続く4回転サルコウ。そして自身初となる、演技後半での4回転サルコウ+3回転トウループを手堅く決め、単独首位に――」
ジャンプだけにスポットを当てた、映像の数々が流れ。
「そして、高畑 大輔、村下 佳菜子の強力な布陣に続き、チームジャパンの最後に登場したのは、篠宮ヴィクトリア選手」
画面いっぱいに映し出されたのは、リンク中央、顔前で紺の衣装に包まれた両腕を、クロスしたヴィヴィ。
音声が、実況の小島アナの声に切り替わる。
『注目のシーズン、今ここから始まります……篠宮 ヴィクトリア。新しいFS――カール・オルフ作曲 「カルミナ・ブラーナ」』
―――――
※イングランド狂詩曲=『ブリッグの定期市』
英国のイングランド民謡をモチーフに、編曲されたもの