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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章    

 3階の真ん中に位置する私室に、脚を踏み入れた途端。

 ヴィヴィは閉めたばかりの扉に背を預け、顔を両手で覆ってしまった。


 
 ああ、駄目だ。

 駄目だ。

 どうして自分は、こんなにも単純なんだろう。

 兄の姿を目にしただけで、胸がつかえて。

 回線を通さない声を耳にしただけで、全身が歓喜に震えて。

 目の前で微笑まれただけで、顔が火照って。

 そして、

 軽く抱き寄せられただけで、

 涙腺が崩壊しそうに――



 何とかかんとか、しゃくり上げそうになるのを堪え、

 その結果、あんな愛想も糞も無い、つっけんどんな態度を取ってしまった。



 だって、仕様が無いじゃないか。

 25日ぶりに “愛しい男” に再会したのだ。

 泣きじゃくる自分も、

 「もっと強く抱き締めて」と懇願する自分も、

 「もう離れたくない」と泣き言を言う自分も、

 全て受け止めて、甘やかして欲しい。

 そして、

 心底嬉しそうな兄も、自分の全てで以て、受け止めてあげたい。

 そう希ってしまうのは、決しておかしくないと思う。

 きっと、おかしくないと思う。

 何故なら、自分は、

 自分は、匠海の――



「………………」

 小さな顔を覆っていた細い指先が、全ての感情を押し留めんとばかりに、きゅうと縮こまる。



(だから…… “セフレ止まり” が理想、だったのに……)



 セフレだったら、きっと耐えられた。

 ただの “躰の関係” だったら、

 逢えずにいた時の永さに、堪らず涙しそうになる事も、
 
 こんなにも相手の一挙手一投足に、心惑わされる事も無かった筈――。



 当惑の表情を浮かべていた、潤んだ瞳が、

 やがて、達観の色を濃くし。

 そして、

 潤った唇から零れるのは、

 薄く淡い――

 けれど、

 体温と同じく、熱い吐息。


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