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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第8章
日曜のその日、篠宮邸には両親と3兄妹が勢揃いしていた。
勿論、篠宮家のアイドル――匠斗(1歳1ヶ月)も。
綿が詰められた革のボールを、祖父母に転がして貰っていた甥っ子は、だんだんボール遊びに夢中になり。
ちっちゃな両手で掴んでは、あらぬ方向へと放ってしまう。
「ほ~ら匠斗、取っておいで~♡」
正に “目に入れても痛くない” 可愛がりようのグレコリーが、猫撫で声で孫息子を促し。
一人歩きもサマになった匠斗が、短いあんよで ちまちまボールを追い駆ける。
「良い子でちゅね~♡ 今度はグランマに、ボールくだちゃい」
幼児言葉で孫の気を引くジュリアンに、匠斗は唯一増えた語録(?)
「あ~う~」
を連呼しながら、革のボールを手渡し。
紅葉の如き手で指さすと、匠海に良く似た少し大きめの唇を開く。
「まんま~」
両親と甥のやり取りを目で追いながら、ヴィヴィは胸の内で取りあえず “定型の突っ込み” を加えておく。
(それは “まんま” じゃありません。 “ボール” です)
「2ヶ月、合わない内に、成長するもんだね……?」
だだっ広いリビングルームの一角。
ソファーセットでコーヒーを飲んでいたクリスの言葉に、匠海も息子を振り返る。
「この前に会ったのは、11ヶ月の頃だったか? あれから3cm位は伸びたかな。体重は10kg超えたし」
「通りで……」
煎茶を啜りながら、そう納得したヴィヴィも、甥の成長ぶりに驚いていた。
ランチは(手掴みだが)自分で食べていたし、たまに ぽてっと尻餅は着くが、一人歩きも出来る。
幼児の成長は早いなあと、しみじみ実感するも。
(その内、私、身長抜かれちゃうのかな? なんせ、両親とも高身長だし……)
余りにも気の早い心配をしていると、どうやら遊び疲れた匠斗は、眠気をもよおしたらしく。
少々ぐずり始めたところを、クリスに抱っこされ。
甥と叔父は2人して、ソファーに横になり、夢の世界へと旅立ってしまった。
「ありゃ……」