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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章       

「こ~ら、ヴィクトリア!」

「……だってぇ……」

「「だって」じゃない。ほら、ちゃんと目蓋を瞑って」

「えぇ~~……。やだ(・ε・)」

 23時を5分ほど過ぎた頃。

 松濤の屋敷の3階――白を基調とした薄暗い寝室では、

 何故か先程から、同様の応酬が繰り返されていた。

「「沢山キスしたらちゃんと寝る」って約束だったろう?」

 広過ぎるベッドに腰掛けた匠海が、確認しながら見下ろしてくるも。

「だって……、眠くないんだもん」

 白い羽毛布団の中、ヴィヴィは常より赤みの増した唇を尖らせる。

「そんな筈が無いだろう? お前、早朝からレッスン行ったし。夜だって」

 まあ兄の言う通り。

 朝は4時間、夜は6時間。

 陸上と氷上とで、みっちりと練習を行った訳だが。 

「そんなの、向こうじゃ、毎日だし。それに……」

「ん?」

「それに、今日はお昼寝、したよ?」

 何故か得意気に、上掛けを両手で握りながら主張する妹に、

 兄は「やれやれ」と言いたげに、シャツに包まれた広い肩を竦めた。

「しょうがないなあ。まさか21歳になってまで、そんな駄々を捏ねるとは」

「だ、駄々!? ち、違う~~っ」

 全くその自覚が無かったヴィヴィは、咄嗟に言い返すが、

「どこが違う? これじゃあ、匠斗と一緒だ。昼寝し過ぎて、夜に眠れずにグズるんだよな~」

 1歳児の甥と同列に見なされた21歳は、白い頬を膨らませてむくれた。

「じゃあ、眠くなるように、ご本を読んであげようねえ?」

 兄の暖かな声で囁かれながら、頭を撫でられるのも大好き――だけれど。

「むぅ……。そういうことじゃ、無く、て……」

「じゃあ、どういうこと?」

 苦笑しながら追及してくる匠海に、痺れを切らしたヴィヴィは、

 シーツの上に横たえていた半身を、とうとう起こす。
 
 白い羽毛布団がずり落ち、露わになった上半身に纏っていたのは、兄が好みそうなナイトウェア。

 ささやかな胸の膨らみを愛らしく引き立たせる、柔らかコットンの桃色ミニワンピ。

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