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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章       

 5日後に試合を控えているのに、

 セックスなんか、している場合じゃないだろうって――?



 そんな事は勿論、2人とも百も承知で。

 だが、抗えないのだ。

 互いを呑み込みあう甘美な戯れを、既に知っている2人には。



 遠く離れていた男と女が、約1月ぶりに再会を果たし。

 しかも、一緒にいられる期間も、長くはない。

 第三者がいる場でも、耳で、瞳の端で、相手の動向を追ってしまい。

 そして、

 2人きりになったが最期。

 まるでその場に、互いだけに有効な磁場が存在するかの如く、

 何故か、引き寄せられてしまう。

 吸い寄せられてしまう。



 掌を重ね合わせれば、その先の腕に触れたくなり。

 言葉を交わすよりも、唇で互いの吐息を感じたくなる。

 ましてや、

 少しでも互いの躰に触れ合えば、

 相手の全てを一瞬たりとも早く、己に獲り込みたいと望んでしまう。



 恋愛感情――

 兄妹にとっての “それ” は凶暴で、

 際限無く突き動かされる、欲望の餓え。



 「相手が欲しくてほしくて堪らない」

 一種 病的な欲求の逝き付く先は、

 19歳の冬まで交わしていたつもりだった “純愛” なんて、美しきものには程遠い。

 執着 

 傾倒 

 偏愛 

 依存

 どれもこれも、不の印象しか与えないそれら。

 そして、

 それらに呑み込まれた、21歳のヴィヴィは――

 欠片しか貰えない心の代わりに、

 今 目の前に在る匠海だけは、

 “全部” “何もかも” 欲しいのだ。



「……っ ん……、ぁッ んんっ」

 漆黒のシーツの上。

 いつもなら広がっている筈の、金の髪はそこには無く。

「ぁんっ ぁ……、硬ぃ~~。あっっ ぉに、ちゃ……っ」

 広い寝室の窓際近く。

 据え置かれた一人掛けソファーに、その姿はあった。

 浅く座面に腰掛けた男の両脇、折り曲げた脚の先を乗せた女が、

 硬い太ももに後ろ手を突きながら、リズミカルに跳ねていた。

 レースカーテンから微かに届く月明かりに、白い肌は冴え冴えと映え。

 男根を深く銜え込んだ膣口が、卑猥な音を立てながら蜜を溢れさせるさまは、

 何よりも男の目を愉しませていた。

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