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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第9章
10月4日(水)
品川駅11:37発の新幹線に乗り込んだ、双子とシエナ・サブコーチ。
柿田トレーナー、そして(日本滞在時だけ世話になっている)牧野マネージャーは、一路 大阪へと向かっていた。
今朝も4時間の早朝練習を熟し、その足で飛び乗った為、隣のクリスは既に夢の中。
サラサラの金の頭を、無防備に妹の肩に預けてくる、双子の兄。
その愛おしさを噛み締めながらも、ヴィヴィの思考は違うところにあった。
昨日の早朝――
いつも通り、5時に目を覚ましたヴィヴィは、途方に暮れていた。
祝日でもない平日の火曜日。
自分が寝ていたのは、他人の寝室で。
しかもその部屋の主は、近くに “妻子の待つ家” がある男。
前日の夜「一度だけ」と愛し合い、どうやらそのまま実家に泊ってしまったらしい匠海は、
いつもなら妹を抱き枕にして寝るのだが。
どうやら「試合直前のヴィヴィをゆっくり寝かせてあげよう」と思ったらしく。
横向けで眠っていた妹の、桃色ナイトウェアの肩口に、後ろから額を擦り付ける様に眠っていた。
180cmを優に超える男が、そんな甘える様な仕草で微睡んでいる姿は、筆舌にし難いほど――
(……か、可愛い……♡ ……って、そ、そうじゃなくって!!)
思わず萌えたヴィヴィは、すぐにそれどころでは無いと思い至り。
厚い肩を両手で掴むと、小さく揺すった。
すぐに目蓋を開けた匠海は、しばし ぼんやりと、有らぬ場所を見つめていたが。
己の肩に乗せられた細い手を掴むと、その腕の先を視線で辿り、
困った表情で見下ろしている妹を認め、ふっと大きめの口許を緩めた。
「と……、泊まった、の……?」
目の前に兄がいるのに、そんな間抜けな問いを寄越す妹に対し、
「ん……、おはよう。ふわわ……、もう、そんな時間か」
欠伸を零す匠海は、あくまでも能天気だった。
「……大丈夫?」
手首を掴まれたまま、また問い掛けるも。
「大丈夫って、何が?」
不思議そうに問い返してくる匠海。
「………………」